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櫻「なんなんだよ……」
二「何かあったのかな、Aちゃん」
相「泣きそうだったよね」
松「追いかけた方が、」
さっきまでの怒りはどこへやら。
見たことないくらいに悲壮な顔つきのAちゃんに、俺らの心配は募る。
とにかくまずは追いかけようと腰を上げた俺を制して、リーダーが立ち上がった。
大「俺が行く。ちょっと待ってて」
松「あ、うん……」
スタスタと部屋を出ていく頼もしい彼を見送って、俺は少し溜息を漏らした。
松「なんでAちゃん、あんないきなり事務所辞めるなんて…」
つい3時間前のライブまではいつも通りだったのだ。
オーラスに相応しい素晴らしい舞台を作り上げて、20周年に相応しい華々しい笑顔を浮かべて。
それなのに急にあんな酷い顔で俺らに最後通牒を突きつけた。
『来月には引退するから』と。
二「やっちゃったな」
いの一番にAちゃんに突っかかったニノが反省してグラスを煽る。
櫻「いや、多分俺のせいだよ。睨んじゃったから」
相「俺、何も出来なくて…」
松「そんなん俺もだよ……」
一気に暗くなる部屋と何の物音もしない廊下。
リーダーはちゃんとAちゃんを連れて帰ってきてくれるんだろうか。
相「そもそもさ……Aちゃんが何か突っ走るのって焦ってる時じゃん」
相葉くんの言葉にハッとする。
確かに、ストーカー事件の時の超速復帰や過密スケジュールもそれだろう。
Aちゃんは焦れば焦るほど自分の喉元にナイフを突きつける。
相「だから絶対、焦る様なヤバいことがあったんだよ」
二「ヤバいことってなんだよ」
相「それはわかんないけど」
翔くんが顎に手を当てた。
櫻「歌えなくなるかもってわかっても辞めなかったアイドルを辞めるようなこと……？」
松「あ、」
皆が一斉にマヌケな声を上げた俺の方を向く。
松「…………まさかだけど、誰かAちゃんと付き合ってたとかないよね？」
恐る恐るの確認に全員の強ばっていた頬が緩んだ。
櫻「ねぇよ」
二「さすがに今更でしょ」
相「いくらなんでもないよ(笑) 」
松「だよね」
ハハハハと声高に笑いつつも、俺らの頭の中には一人の男の姿が浮かぶ。
………いや、まさか。ね。
相「リーダーと付き合った、とか？」
二「………なんで全員が気遣って黙ってたこと言うんだよ」
相「だってリーダー、珍しく俊敏だったし」
相葉くんの一言でまた部屋の温度が1度下がった。
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作者名：藻くずちゃん | 作成日時：2021年12月30日 22時
