愛を噤む酒場の店主 ページ6
朱色に染まった頬をアルコールの所為にした朝日が昇る午前四時頃。
午前三時まで営業している酒場はすでに閉店し「Clause」へと札をひっくり返してきた。
今夜もまた顔を見せるのに名残惜し気に帰っていくアルマを見送ったのはつい先ほど。
今日も朝早くから騎士としての仕事をするだろうに彼は閉店の時間まで店に居座る。
いつかぶっ倒れやしないかと気が気じゃない。
アップタウンはダウンタウンより行儀がいい街といっても犯罪がないわけじゃない。
お天道様に照らされた街は暗黙のルールなどなく国の法に則って進んでいく。
ダウンタウンのように各区域の元締めが居て、法の上にさらに厳しいシガラミがあるわけでもなし。
むしろそうしなければ街として立ち行かないダウンタウンが異常なのか。
誰もいなくなった店内を片づけながらどうでもいいことを考える。
従業員が一人しかいない「烏合の衆」では日常風景。
そろそろ早起きの連中が起きだす四時を回るころまで眠気を訴える瞼を叱咤しながら店内を清潔にするのだ。
「ダリィ…。」
誰もいないのだから文句を垂れたって構うまい。
酒が飲みたくて始めた酒場で己が食べたいツマミを気ままにつくていたら勝手に集まってきたこの区域の連中。
他の区域よりも幾分かお行儀のいい彼らはそれほど汚していかないし、どちらかというと楽な清掃も眠気がある限り面倒だと感じてしまう。
買いだしだって本当はそれほど好きじゃないし。
料理だって自分が食べられればいい程度の粗末なもので十分だ。
最初の酒場のツマミメニューはどれもこれも今よりもっと手抜きだった。
シンクに積み上げた洗い物の中に一際目立つ自分専用のグラス。
誰かさんが常連になってから増えていった調理器具。
微塵も気づいていないであろう誰かさん専用の自分と色違いのグラス。
「馬鹿みてェ。真っ赤にして。ガキかってノ。」
グラスを泡まみれにしながら思い出すのは間抜け面で呆けた若造騎士。
間接キス一つで耳まで真っ赤にした彼は俺も相当恥ずかしがっていたことに気が付いていただろうか。
いや。絶対気が付いていない。
アイツは遠回しな愛情表現には決して気づかない鈍感だ。
どうせ俺の顔が赤いのは酒が回っているからだと思っていただろう。
普段あれだけ好きだ好きだ言うくせに自分への好意には鈍感。
能天気な若造にほとほとあきれる。
「早く気づけばーか。」
この胸の高鳴りを言葉にしてやるにはまだ早いのさ。
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午睡(プロフ) - 空弥さん» ご感想ありがとうございます！早めの更新を心掛けて頑張ります！ (2019年2月26日 19時) (
レス) id: 3cc312a385 (このIDを非表示/違反報告)
午睡(プロフ) - ナッツさん» ご感想ありがとうございます！とっても励みになります…！ (2019年2月26日 19時) (レス) id: 3cc312a385 (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - 絡みがすごく可愛らしくて好みです……！作者様のペースで更新頑張ってください、応援してます (2019年2月24日 13時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
ナッツ(プロフ) - 好きです!!!最高です！続きめっちゃ気になります！更新楽しみにしてます!!!!!!! (2019年2月24日 3時) (レス) id: 7b2bfdb44e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：午睡 | 作成日時：2019年2月18日 19時
