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「......ふぅ。」
万年筆をかたりと机に置く。広がる紙についたインクを乾かしながら、ぐぐ、と伸びをする。机上を照らす蝋燭は、もう短くなりきっていた。ふぅ、と息を吹き、炎を消しても、窓から覗く月明かりだけで部屋を照らすのは十分だった。昨日は満月。今日も、もちろん月は大きい。ゆっくりと、揺らさぬように寝台に腰掛ける。既に布団の上で丸まって眠っている子猫を撫でながら、自分もそっと布団の下に滑り込んだ。
「......A。」
彼女の名を呼ぶ。人の姿の彼女に出会い、たった一日。されど一日。吸血鬼の存在、サーヴァンプ、リューゲンベルク。この一日で俺の脳内に入ってきた情報の量はとてつもなく大きく重いもので。
......戦争。うちの国では珍しいことではない。むしろ、うちの総統さんは戦争大好きだ。うちの国が出来てから負け知らず。世界的な大国となった我々国。幹部の圧倒的若さと軍事力の大きさ。未知の国として世界に知れ渡ったこの国の設立当時のメンバーであり、外交官である俺。......知識が乏しい訳ではない。けれど、やはり。
「世界って......広いんやなぁ。」
天井の模様を目で追う。中心から外に、蛇のように唸る模様をつつつ、と。......この部屋はこんなにも狭くて四角いのに、世界は広くて大きくて、丸い。
『これはね、サーヴァンプの証。......一種の呪いよ、こんなの。』
彼女の額に刻まれた『
綺麗な綺麗な''桃色''の瞳。
月夜に照らされて出逢ったあの時。下位吸血鬼と戦闘時のあの時。垣間見えた綺麗な桃色。俺と同じ普段の緑色も、マホガニーの髪も、細い腕も脚も、整った顔も、心も、何故だか愛おしくなってしまったのだ。
『
『『兄弟戦争』をな......』
「......受けてたつわ、そんなん。」
挑発も戦争も。珍しく自分の闘志に火が点いた事に自分でも驚きながら、自然と口の端が吊り上がる。すぅすぅ、と静かに、幸せそうに寝息を立てる子猫を見れば、自然と表情も緩くなる。Aを腕の中に抱き締め、暖かさを感じながら、襲ってくる眠気に逆らわず、従って瞼を閉じた。瞼の裏の黒い世界、次は何が見えることか。
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myona859(プロフ) - コメ失礼します！この作品、漫画のSERVAMPを真似していますか…？誰も知らない兄弟がいたり、名前を呼んだら仮契約したりする所が似ているので…違ったらすみません！ (2020年4月7日 17時) (
レス) id: b40e1d4ca9 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - 貴方の作風、この作品の設定、もう全部に惚れてしまったのでコメしてしまいました。応援してます、続編待ってます！ (2020年2月12日 23時) (レス) id: ee6d8feaa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はなし | 作成日時：2020年1月4日 11時
