二度と逢えない君へ。【Fischer's×ニドナツ】 (ページ2)

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◆プロローグ◆ ページ2

森山 A
決して馬鹿なわけではないが阿保であり音楽については完全馬鹿だった。
まあ、ただの阿保とか音楽馬鹿だったら良かったが
それが重なり合ってしまったのが運の尽き。
外見は華奢で大人しそうな女の子なのだが
本性はめちゃくちゃなお転婆娘だった。

高校3年の夏。

まあ、その頃はとにかく勉強!の時期でそれでこれからの将来すべてが決まると言って良い。
そんな時期に転校してきたアイツ。
そしていきなり文化祭に向けてバンドを結成すると宣言したのだ。
わざわざバンド禁止の北高に転校してきてそんな馬鹿げた宣言をした理由は
ただ一つ。

そこが大好きなバンドの出身校だったから。そんなけだ。

作詞作曲も出来ない、演奏が出来る楽器があるわけでもなく
強力なコネもあるわけでもない。
暴走する性格に反して実は体力もあまりない。
だけど彼女は大好きなバンドが頭角を現した文化祭に憧れて
小さな体にみなぎるパワーを放出するかのような歌声をたずさえて
”夢”を叶えに来たのだった。

バンドを結成し、北高文化祭で演奏するという”夢”を。

自分で引き起こしたトラブルを笑って周りにぶちまけて、
どこまでもまっすぐまっすぐ突っ走っていく。
彼女はブレーキの壊れた10ｔトラックだった。
そんでひき殺されるのは主に俺の役目だった。
迷惑な話だ。

「ごめん！ＣＤ間違えちゃったｗ」
能天気に笑いながら”片手だけで”合掌の形を作る。

「ったく。何やってんだよ！とっととこの放送止めるぞ！」

昼休憩の北高に響くのは、、、
ノリノリなギターとそれに反する壊滅的な歌声だった。
昔の黒歴史ＣＤだ。

「結構好きだけどなあ」
「頭だけじゃなく耳も腐ってんのかお前。」
「腐って無い！聴いてると元気ｇフッ」
嗤いやがった。
「とにかく教頭に、、、
『＿＿＿ 3年1組森山、同・絹張放課後、職員室へ来るように。』

「あーあ。失敗しちゃったなあ」
「お前のせいだろ。こんなんじゃ文化祭なんて無理だぞ」
「大丈夫。諒君いればどうにかなる！」
「お前が馬鹿な事しなけりゃな。」
「もう！そんなこと言う！」
「事実だ阿保。」
「またっ！諒君の馬鹿！出来るもん！」
すねて教室の中に行ってしまった。

絶対に聞こえない様につぶやいた。
「大丈夫。お前の”夢”叶うぞ。」

俺は知ってる。
バンドが出来る事も。
その後の事も全部。全部。

やるべきことはただ1つ。

俺がやらかした最大の過ちをなかったことにすること。

それだけだ。