慈悲を与え、追い詰め、 ページ6
.
「そういうことねぇ」
オスマンはその言葉と共にため息をついた
Aの特殊能力だ
詳しくは教えてもらっていない
唯一はっきりしているのは“みえる”能力である、ということだけ。
きっと女性のお腹に新たな生命が宿っていることを“みた”のだろう
鳩が豆鉄砲を食らったような表情をしていた女性は
嬉しさのあまりかその大きな瞳に、並々と涙を浮かべた
どこか気まずそうに、Aが言う
『生まれてくる赤ん坊に罪はないからな』
「っ、ありがとう、ございます......っ！」
『勘違いしないで。
貴女の為じゃなく、赤ん坊の為に殺さなかっただけだ』
「それでもっ、本当にありがとうございます......！！」
女性は目の前の騎士に心の底から感謝した
女性には、もう何週間も会っていない愛する夫がいた
この使用人としての仕事を辞めた後は、夫と二人で、あわよくば子供と
貯めに貯めたお金で店を開こうと思っていたのだ
まだお腹も膨らんでいなかったため、気付かなかった
何故妊娠に分かったのかが気になったが、女性はそれ以上に
己の腹に子供を宿していたことにこの上ない幸福感を感じていた
ああ、彼にこの心からの感謝をどう伝えればよいのか
言葉だけでは伝えきれないほどの思いを抱えながら
女性はただただ感謝の言葉を口にしていた
..................さて。
思わぬ事態も終わったことだし、.........そろそろだろうか
使用人の女性を優しく抱き上げたAを一瞥し
オスマンは相手国.........否、敵国の外交官に目を向けた
「さぁて、外交官殿。
「ヒィッ.........！！」
失礼だな
あざとく首を傾げたつもりなのに、そんな怖がらなくてもいいじゃない
流石我々国筆頭外交官といえようか。
内心そう思っているものの、表情には一切も不機嫌さを感じられない
極上の笑みを浮かべ、相手国の外交官の前に立つオスマンを見て
Aは無意識にも苦笑いを浮かべた
きっとあの外交官は目の前の男を
悪魔か何かだとでも思っているのだろう
『阿呆もここまでくるとどうしようもないな』
自分達はそうされて当然の行いをしたというのに
いざ自分が殺されるとなれば恐怖に身を震わせる
男たるもの、もう少し威勢を持って欲しいものだ
このままでは埒が明かないことを悟ったAは
耳に装着していたインカムの電源を入れ、徐に桃色に光るボタンを押した
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 293人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ヤオリム(プロフ) - 更新頑張ってください！応援してます！ (2020年1月4日 14時) (
レス) id: 5300aa66a5 (このIDを非表示/違反報告)
黒葉くん@wrwrd!煽り組、ら民 - 忠誠、誓 って字でめっちゃ兄さん出てきて泣くかと…… (2019年3月26日 2時) (レス) id: 089aae62ec (このIDを非表示/違反報告)
夜行性(プロフ) - 初っ端からかっこよすぎて物語に入る前にお気に入りに追加させていただきました！！更新頑張ってください。 (2019年2月26日 0時) (レス) id: 592213ae86 (このIDを非表示/違反報告)
ギル(プロフ) - え、好きです。設定が自分好みすぎて語彙力ふっ飛んでいきました。更新まってます。 (2019年2月25日 23時) (レス) id: ac1cad5a35 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藍色鳩羽 | 作成日時：2018年12月16日 22時
