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「沖田の髪ってさぁ、」
Aの手が、俺の髪に触れた。
「サラサラだよねぇ〜羨ましいや〜。」
『何言ってやがる。』
「沖田の髪触ってたらまた眠くなってきた……」
「お前、どうせほっぽってたらまた寝るだろィ。
布団入れィ。」
『えー、やだよ、まだ寝たくないよぉ〜。沖田の髪きもちーもん〜。』
やめてほしい。でも、やめないでほしい。
コイツは酔っ払ってこんなことをしてるんであって、
これは本心じゃないのかもしれない。
そう思うと、なぜだか辛い。
それなら、もういっそ何もしないで欲しい。
なのに、やっぱりやめないで欲しい。
無意識に、Aの髪に手を伸ばす。
そうか、コイツ天パだったのか。
柔らかくて、兄とは少し違う天パ。
___髪を手に掬って、綺麗な首筋が現れた時。
その白い首に、1つ、赤い「印」が付いているのを見た。
"んー……神威、戻ってきたの?"
わざとらしく壁を叩いた様な音、開いた窓、この「印」。
頭の中で、全てが繋がったのは一瞬だった。
『……おら、立て。そして布団へ行け。』
「えー。」
赤ん坊のように口を尖らせながら立ち上がったAの足元がふらつく。
『あぶねェなァ。』
肩を組んで、支えてやる。
また、桜を思い出す。
「沖田って、いい匂いする。」
Aが、俺の首筋に頭を埋めた。
「なんか落ち着く〜。」
頭をぐりぐりと、俺に押し付けるA。
肩を組む腕の力を、ほんの少し強めた。
自然とAの体が俺に寄って、そのまま抱き寄せた。
どうせ酔ってるなら、コイツは覚えてないなら、
こうしたって、無かったことにできる。
俺の中だけの間違いにできる。
___そこで、気づいた。
コイツ、酒の匂いに混じって、うっすら桜の匂いがする。
「おきたぁ?」
『……』
今、俺がこいつに、正直に話せる本心なんて、もう何も無かった。
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作者名:ニコ | 作成日時:2020年4月3日 10時