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side沖田
「はー、疲れた。」
『オメェは記録取ってただけだろィ。
選手より疲れた顔してんじゃねェ。』
「いや、それがですね、聞いてくださいよ。」
練習試合の帰り道。
午前中だけだと思っていた練習試合は1日練習となり(予定には書いてあったらしい)、
帰る頃には辺りは赤く染まっていた。
練習は隣町の高校とだったから、行き帰りは電車。
プシュー、とドアが開いて電車に乗り込むなり、へたりとAは席に座った。
俺も続いて隣に座る。
「昨日のお登勢さんの話、銀ちゃんにしたらめちゃ怖がっちゃってさ、
一人で寝れないからって明け方までしりとりに付き合わされてもう……ふぁ……今日ずっとあくび止まんなくて……」
『そーいや、土方もその話したらビビり倒してたなァ。
俺ァあいつの手足縛って寝れるようにしてやったからぐっすりだったぜィ。』
向かい側に近藤さんと座った土方を見ながら言う。
「あー、だから土方さん今日湿布だらけだったんだ。
っておい、サラッとなんてこと言ってんの。」
相当疲れてるのか、ツッコミにも覇気がない。
目もとろんとして、今にも寝そうだ。
「銀ちゃんにはさっさとあの話は忘れてもらわないと……じゃないと……
やばい、寝そう……」
頭をこくん、こくん、とさせるコイツの顔を覗き込む。
目ェ閉じてんじゃねェかィ。
『……おい。』
頭の前で手を振っても、反応がない。
……シメた。
俺の横で寝ようなんざ、いい度胸してんじゃねェか。
確か、カバンの中に筆箱を入れっぱなしにしてたはず。
やっぱペンは、いつでも持ち歩いとくもんだねィ。
そう思ってカバンに手を突っ込むと。
___こてん。
『え、』
Aの頭が、俺の肩に転がってくる。
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……これじゃ鞄漁りにくいじゃねェか!
少しでも動いたら起きてしまいそうで、体がびしっと固まる。
恐る恐る顔を除くと、穏やかに寝るA。
___コイツ、意外とまつ毛長ェ。
なんとなく、桜を思い出す。
身体中が少しずつ火照ってきて、なんだかソワソワして。
あれ、俺の自然体って、どんなだったっけ。
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……思わず唇を噛んで、俯いた。
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作者名:ニコ | 作成日時:2020年4月3日 10時