思い出の部屋 〜翔side ページ9
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A：「私、まだあそこに智がいる気がしてね。
どうしても......離れることが、できないの」
翔：「そうだよな。 思い出がたくさん、つまってるもんな」
陳腐な台詞しか返せないオレに
Aはもどかしそうに言う。
A：「そういうことじゃなくて！
今もあの部屋にいると、智の存在を感じるのよ。
まるで、まだ、一緒に暮らしてるみたい。
きっと......私のこと、見守ってくれてるんだと思う」
オレは少し唖然として
「だって、こないだだってね、
勝手にテレビのチャンネルが釣り番組になってね...」
話を続けるAを黙って見つめる。
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そんなさ、 『ゴースト』 じゃあるまいし。
オレは昔見た映画を思い出す。
A......。
ねえ、現実が辛すぎて
......夢との区別......つかなくなっちゃったの？
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A：「......翔、信じてないでしょ」
翔：「あ、いや...」
信じるよと言い切れないオレに
A：「翔なら信じてくれると思ったのに」
翔：「......ごめん」
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Aが悲しそうな眼を向けるから
自分でも思ってもなかった言葉を つい口走る。
翔：「A？......ね、その部屋さ、オレも一緒に住んでいい？」
A：「なんでよ、もぉ。 全然、意味わかんない」
軽く笑い飛ばされたけど
翔：「どうせオレ、春には会社の寮出なきゃなんないしさ。
お前だって家賃半分で、思い出の部屋に住み続けられんだぜ？」
A：「でも...」
.
まだ迷っているAに、とどめの ひと押し。
翔：「それに...オレだって会いたいよ？.....その......智くんに」
A：「翔......信じて......くれるの？」
オレは今度は、上手に、頷いた。
翔：「ああ。...信じるよ」
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革ベルト
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