不審者？！ 〜雅紀side ページ10
公園をぐるっと一周したあと
家に帰る途中の道
通りの向こうにAちゃんちのマンションが見えて
後ろには、輝く東京タワー
今日は、いつもの、オレンジ色
何階の部屋なんだろ
もう、おうち、帰ってるのかな？
.
と、突然。
「相葉さん？」
後から名前を呼ぶ声。
やばっ。
ぼーっとしてたからオレだって気づかれちゃった？
おそるおそる振り返る。
えっ？
雅：「...Aちゃん？」
A：「こんばんは。…どうしたんですか、こんなとこで」
ぺこりと頭をさげて挨拶すると
不思議そうに尋ねる
そーだよね、人んちのマンション見上げて
オレ、完全に不審者だよね
雅：「あ、こ、こんばんは。
いやね、お嬢と、あ、こいつとまた、散歩に...」
今日も胸に抱えたお嬢を、Aちゃんに見せる
Aちゃんはにっこり笑ってお嬢を見て
A：「そうだったんですか」
雅：「えっ、Aちゃんは？ 今帰り？」
A：「あ、はい...。
あっ。そうだ。
私、相葉さんのタオル、お返ししないと。
あの…ちょっとだけ、待っててもらえますか？」
雅：「えっ、いいよ、別に返さなくて。持っててよ」
A：「でも...すぐ取ってこれますから。
あ、でも、そっか。
こんな、道の真ん中でなんて...待てませんよね」
急に辺りを見回すAちゃん
まばらとはいえ、時折人や車が通る道
オレは、正直、迷ってた
Aちゃんとの唯一のつながりである
タオルを受け取っちゃったら
もう二度とAちゃんに会えない気がして
でも、もし今、こうしてあと少しだけしゃべれるなら...
雅：「じゃさ」
オレはすぐそこの、公園の入り口を指差す
雅：「あそこで待ってる。
ほら、ここより目立たないし」
Aちゃんはにっこり笑うと
はい、と言ってマンションに向かって駆け出した
.
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