願い 〜雅紀side ページ34
歯ブラシを待つ間、写真の続きを見る
南国の木とか、外国のお寺とか、黒人のちっちゃな女の子とか…
本当にたくさんの写真
Aの瞳に映っただろう、過去の景色たち
オレも見てみたかったな。一緒に
多いのは空と海の、写真
青が、好きなのかな？
一枚の写真が目に付く
よく晴れた空の下
少し鈍い色をした穏やかな海の上に
浮かぶ白い小さなヨット
背景の岸に遠く見える建物は、え？
マリンスタジアム…？
雅：「ね、これさ、千葉？」
戻ってきたAに訊く
A：「そう。あれ、言ってなかったっけ？…私の地元」
首を傾げて当然のように言う
雅：「えーっ。マジ？」
知らなかった
オレたち
I Love 千葉、仲間だね？
雅：「そっか。じゃ、今度、一緒に帰ろっか」
こうして、一緒の時を過ごして
同じ景色を見て
これからゆっくり知っていきたいよ、Aのこと
Aの過去も現在も…未来も、ゆっくり
.
時計を見上げふと気づく。もうすぐ0時
雅：「あっ、A。
今日は一緒に見れるよ？」
窓際のベッドに並んで座り
部屋の明かりを消して、カーテンを開く
週末の今日は、また、青い東京タワー
.
…ね、A？
いま、この街のどれだけの人が
この風景を眺めてるんだろうね
一体どれだけの人が幸せで
でも、中には寂しかったり
きっと、いろんな想いの人がいて
隣に座るAの身体に腕を回す
手放したくない、柔らかな温もり
触れる手に、つい力がこもる
A：「…どしたの？ 雅紀」
雅：「ううん、なんでもないよ」
窓の外を見つめながら思わずオレは
街中の人々の平和を
願わずにはいられなかった
.
ラッキーアイテム
革ベルト
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