306.本当の理由 ページ9
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「……Aやシアン、ミンミンならヨンジュの意思を継いで、またN͜͡umberとして再スタートすることを決めるって思ってた。どんなに時間が掛かっても、ヨンジュにオリンピック主競技場を見せるためにアイドルで居続ける道を選ぶって。……違う?」
「……それ、は、」
言葉に詰まる。フェテク兄さんの言う通りだった。
「何よりシアンとミンミン、事務所がこの番組にAを出させること自体おかしかったんだよ。いくら二年経ってシアンとミンミンが個人で売れてるからって、突然番組側から依頼されたからって、あんなにN͜͡umberを大切にしていたみんながAが別のアイドルグループに所属してしまう可能性がある場所に行かせる? Aがまたステージに立つなら、二人は今の仕事を投げ捨てたってN͜͡umberの再結成を選んだと思う。事務所だってそれを許したはずだ。N͜͡umberが再結成して困る人なんて誰もいないんだから。
……それなのにN͜͡umberじゃなく、この番組を選ぶなんて絶対におかしいよ。まるで、AにN͜͡umberじゃ駄目な理由があるみたいだ」
「……」
N͜͡umberじゃ、駄目な理由。
もう、何も言い返せない。フェテク兄さんは全部わかってしまったんだ。ヨンジュが居なくなったからじゃない。N͜͡umberが解散した本当の理由を。
あの日のことがフラッシュバックして、うまく息が出来ない。
「……ねえ、A。N͜͡umberが解散した理由、いま僕が考えていることで合ってるの? そうじゃないなら、お願いだから違うって言ってよ。だって、こんなの……」
「…………ごめ、ごめんなさい。全部ぜんぶ、わたしのせいなんです。わたしが、N͜͡umberの————」
せり上がる胃液をぐっと飲み込んで、やっとそう口にした。それを最後まで聞いたフェテク兄さんは、目を見開いて。それから「……やっぱり、そうだったんだね」と悲しそうに目を伏せてから、私を強く抱き締めた。
「ごめん、気付いてあげられなくて。僕が、気付いてあげなきゃ駄目だったのに……ヨンジュがいない分、僕がAを支えてあげなきゃいけなかったのに……」
「……いいんです。だって、フェテク兄さんにはフェテク兄さんの人生があるから。これ以上、迷惑掛けたくなかったんです。お葬式のときも色々迷惑掛けちゃったから」
「……バカ。迷惑なわけないじゃん」
いつの間にか泣いていたフェテク兄さん。私の代わりに泣いているみたいだった。
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アップルパイ(プロフ) - 7さん» N͜͡umberのメンバーまで好きでいてくれて嬉しいですし、素敵なボイプラ関連の作品がたくさんある中で一番好きと言っていただいてとても恐縮です……! まだまだ長いとは思いますが、完結まで書きたいと思っているので、これからも読んでいただけたら幸いです。 (10月6日 20時) (レス) @page27 id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» コメントありがとうございます! しばらくシリアスなシーンが続きますが、これからも読んでいただけたら幸いです! 本当に展開が遅くて申し訳ないのですが、更新頑張ります! (10月6日 19時) (レス) id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - N͜͡umberのみんなに会いたくなるしYouTubeでMilkywayの映像を検索したくなりました。ボイプラ系の中で一番好きな作品です。ぜひ完結までいってほしいです。応援してます (10月3日 14時) (レス) @page27 id: 643f8a8165 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 主人公の気持ちが細かく描かれていて凄く悲しくなりました。続きを楽しみに待ってます。 (10月2日 23時) (レス) @page27 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年9月17日 5時