304.スランプ ページ7
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「……行ったみたい?」
「みたいですね……すみません、わがままに付き合わせてしまって」
しばらくして、三人が階段を上がっていく音がして。何とかバレずにやり切れたことにほっとしながらフェテク兄さんに謝ると、「ほんとだよ」と息をつかれた。
「別にいいけどね。なんかあっちもあっちで邪魔できなさそうな感じだったし。……というか、あれ、ハンビンだったよね」
「う……まあ、はい……」
声で分かるよ、そう言ったフェテク兄さん。そりゃそうか、ただでさえ耳の良いフェテク兄さんだし、特にハンビンとは前回のグループバトルに続いて同じチームなんだからハンビンの声は聞き慣れているはずだから。
居心地が悪くなりながら頷くと、「やっぱり」とフェテク兄さんは納得したように呟いた。
「ハンビンが泣いてて、それを誰かが慰めてた感じか。多分、声的にウムティと……」
「……ホンハイです」
「そっか、二人にはお礼言わなきゃなあ。……だめだなあ。本当は同じチームの僕達がしなきゃいけないことなのに。特に僕はリーダーだし。ハンビンの様子が変だったのは分かってたのに」
「……そう、なんですか?」
聞くと、フェテク兄さんは頷いて「スランプに近いやつなのかな」と口にした。
「表現したいことが上手くできない、みたいな。それで悩んでそうだった。僕からしたら上手くやってると思うんだけどね。中間発表でも絶賛されてたし」
「ですよね……俺も中間発表のとき、ハンビンはセンターを上手くこなせてるなって思ってました。だから、ハンビンが悩んでたなんて全然……」
「そうだよね。ハンビンはいつも良くやってるよ。シグナルソングからずっと。ビジュアルも実力も性格も全部揃ってる、1位にふさわしい子なのに」
(シグナルソングから……1位にふさわしい……)
フェテク兄さんの言葉を頭の中で繰り返して、ふと気づく。そうか、きっとハンビンは。それなら、私は。
「あの。俺、用が出来たっていう、かっ……!?」
「わっ、ちょっと! さっきまでふらついてたくせにいきなり立ったりしたら危ないでしょ!! 」
立ち上がろうとした瞬間、立ちくらみがして。ずるっと後ろに倒れそうなったのを、ぎょっとしたフェテク兄さんがすんでのところで支えてくれた。危ない、頭から思いっきり壁にぶつけるところだった。
「す、すみません……」
「もう、本当にナナは……」
フェテク兄さんが深いため息をつく。
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アップルパイ(プロフ) - 7さん» N͜͡umberのメンバーまで好きでいてくれて嬉しいですし、素敵なボイプラ関連の作品がたくさんある中で一番好きと言っていただいてとても恐縮です……! まだまだ長いとは思いますが、完結まで書きたいと思っているので、これからも読んでいただけたら幸いです。 (10月6日 20時) (レス) @page27 id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» コメントありがとうございます! しばらくシリアスなシーンが続きますが、これからも読んでいただけたら幸いです! 本当に展開が遅くて申し訳ないのですが、更新頑張ります! (10月6日 19時) (レス) id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - N͜͡umberのみんなに会いたくなるしYouTubeでMilkywayの映像を検索したくなりました。ボイプラ系の中で一番好きな作品です。ぜひ完結までいってほしいです。応援してます (10月3日 14時) (レス) @page27 id: 643f8a8165 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 主人公の気持ちが細かく描かれていて凄く悲しくなりました。続きを楽しみに待ってます。 (10月2日 23時) (レス) @page27 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年9月17日 5時