303.駄目 ページ6
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「ふぇ、てく兄さん……?」
聞き覚えのある声。何処かふわふわとした思考のまま、ゆっくりと声がした方を見ると、そこにはフェテク兄さんがいた。視界は相変わらずぼやけているけれど、フェテクさんが心配そうに私を見ているのは分かった。
こんな姿を誰かに見られてしまったこと自体は最悪だけど、不幸中の幸いというか、フェテク兄さんならまだましかと思ってつい力が抜けた。
「……大丈夫、じゃないよね。どう見ても」
「……だいじょうぶ、です。ちょっとふらついただけなので」
「ふらついたって……全然大丈夫じゃないじゃん」
フェテク兄さんがしゃがみこんで、私の額に優しく触れる。
「熱は……無いか。でも逆に冷たすぎて心配になるんだけど……」
「ハハ……」
体質ですよ、そう笑顔をつくる私にフェテク兄さんは深いため息を吐いて。
「……とにかくナナの部屋に行こう。床じゃなく、ちゃんとベッドで休まなきゃ。でも流石に僕だけじゃ運べないだろうから、他の人も……あ、あっちに誰かいる……?」
「……だっ、!!」
向こう側、階段の方を見たフェテク兄さん。そうだ、あっちには。急に意識がはっきりして、反射的に「駄目です」と声を上げそうになったけれど、すぐに口元に手を抑えた。いつの間にかバクバクと心臓が鳴っている。
(……き、気付かれてない、よね?)
おそるおそる振り返って階段の方を見るけれど、ハンビンは泣いていて、ウムティ兄さんとホンハイもハンビンを慰めることに意識が向いているからか、三人とも私とフェテク兄さんがここにいることに気づいていないようだ。
「え……? なに……?」
ひどく安堵しながらフェテク兄さんの方をまた見ると、当然のことながらフェテク兄さん困惑した顔をしていた。
「……人を呼ぶのは駄目?」
さっきよりも小さな声でそう聞いてきたフェテク兄さんに、こくりと頷く。
「……というか、あっちにいる人には気付かれたくない?」
「……」
「……もー、なんなの……意味わかんない……」
頷いていいのか迷う私。それでも無言は肯定とされたのか、何かしら察した様子のフェテク兄さんはぶつぶつと文句を呟きながら、私の隣に座り直した。
「僕だけじゃどうしようもないし、せめて落ちつくまで一緒にいてあげる。ほら、肩に頭置いていいから」
「……ありがとう、ございます」
小さく呟いて、私は言われるがままフェテク兄さんの肩に頭を預けた。
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アップルパイ(プロフ) - 7さん» N͜͡umberのメンバーまで好きでいてくれて嬉しいですし、素敵なボイプラ関連の作品がたくさんある中で一番好きと言っていただいてとても恐縮です……! まだまだ長いとは思いますが、完結まで書きたいと思っているので、これからも読んでいただけたら幸いです。 (10月6日 20時) (レス) @page27 id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» コメントありがとうございます! しばらくシリアスなシーンが続きますが、これからも読んでいただけたら幸いです! 本当に展開が遅くて申し訳ないのですが、更新頑張ります! (10月6日 19時) (レス) id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - N͜͡umberのみんなに会いたくなるしYouTubeでMilkywayの映像を検索したくなりました。ボイプラ系の中で一番好きな作品です。ぜひ完結までいってほしいです。応援してます (10月3日 14時) (レス) @page27 id: 643f8a8165 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 主人公の気持ちが細かく描かれていて凄く悲しくなりました。続きを楽しみに待ってます。 (10月2日 23時) (レス) @page27 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年9月17日 5時