「君は悪くない」7

347.大切な人 ページ50

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「そうですね……一度カバーしたことがあるからこそ、その時とは違う姿を見せなきゃいけないって自分の中で悩むことはありました。特に編曲でそう見せようと思ってしまって。グループのみんなには自分のエゴで迷惑を掛けてしまったかもしれません。
……でも、あの時の自分と今の自分は置かれている状況や経験したことが違うから。成長した……っていうのもちょっと違う気がするんですけど、とにかく、今の自分なら無理して色々変えなくても昔とは違う、よりこの曲に合ったパフォーマンスが自然体でできるんじゃないかって思って。それに気付いてからはチームの色に寄り添った編曲出来たかなあと」


 ミニョク先輩の質問に顔を強ばらせたスタークリエイターの方が見えて胸が痛んだけれど、それでも笑顔のまま私は話した。
 

「ありがとうございます。ナナ練習生がどう編曲したのかにも注目ですね。……最後に、ナナ練習生にとって『Home』はどんな想いで書いた曲でしたか？」

「……大切な人とずっと一緒にいれるように。そんな気持ちで書いた曲でした。だから、スタークリエイターの皆さんも大切な人を思い浮かべながら聴いてください」



(そうだ、大切な人……)

 歌詞を書いたときも、MCステージのときも。ここで課題曲として練習をしていたときも。いつだってこの曲と向き合うときは私の大切な人、ヨンジュのことを考えていた。
 だから、今日もヨンジュのことを考えようと思った。昔と違って隣にいなくても。今も私の何よりも大切な人はヨンジュだし、それはこの先も絶対に変わらないから。

 そう思いながら「では、パフォーマンスの準備をお願いします」と言ったミニョク先輩に頷いて、みんなと顔を合わせてから自分の立ち位置に移動した。



(ヨンジュ……ステージの上で、あなたを思って歌うのはこれで最後かもしれない。だから……)

 私、精一杯歌うよ。あなたがいる場所にまで響くように。だから、聴いていてくれたら嬉しいな。

 目を瞑れば、ヨンジュの太陽のような笑顔が浮かぶ。大好だった。その笑顔を見れば、どんなに苦しいことも耐えられる気がして。ヨンジュにはなれなくても、ヨンジュの隣で、いつまでもその笑顔を見ていたかった。



「——『내가 뭘 어쩌겠어 나는 너가 없으면(僕にどうしろっていうんだ 僕は君がいないと)낡은 로봇처럼(古いロボットみたいに) 맘이 멈추고 늘 차가워(心が止まっていつも冷たいんだよ)』」





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