「君は悪くない」7

340.正しい選択（ミン・ハミン） ページ43

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 AちゃんがN͜͡umberの曲を歌えなくなった。それは私以外だとシアンくん、ミンジュン、社長、あとはN͜͡umberのマネージャーとか一部の事務所スタッフくらいしか知らなかったことだ。ずっとずっと秘密にしていて、もしかしたらこのまま墓場まで持って行くんじゃないとすら思っていて。


"知っている人が多ければ多い程、Aは自分を責めて辛くなってしまうし、外はもちろん、事務所内でもあまり公にしない方がいいだろう"

 Aちゃんがあまりに自分を責めて憔悴し切って。いくら病院でカウンセリングを受けても改善しない、むしろ悪化して、曲を聴くだけでフラッシュバックで吐いてしまう様子から、社長がそう判断したのだ。
 社長は正しかったと思う。もしもあの時、そしてN͜͡umberを解散すると決まった時にこれを公表したなら、Aちゃんにまた地獄を見せることになっていたかもしれないから。ヨンジュくんが亡くなったとき、事務所や警察が止めても散々追いかけ回して連日報道したマスコミだ。きっとこれを公表していたら、一度消えつつあった火に油を注いで大炎上させるような事態になっていただろう。もう、あんな地獄を見たくもないし見せたくもなかった。



 だからこそ私達はあの時、韓国からAちゃんを逃がすしか選択肢が無かった。光のない瞳で「N͜͡umberから脱退します」と言ったAちゃんをそのまま受け入れて、もう全部終わりにしよう、日本で静かに過ごした方がいい、気が向いたらヨンジュくんに会いに来たらいい、としか言えなかった。どんなに私達がAちゃんを大切に思ってても、ずっと一緒に居たいって思ってても、N͜͡umberが生まれ活動してきた韓国に居る限りAちゃんは上手く息が出来ないだろうから。

 街中に流れる『milky way』も、至る所に設置された広告も。前は見る度に「頑張ってきた甲斐があったね」と笑い合えたのに、こうなってしまった後では皮肉にもAちゃんを傷付けるものにしかならなかった。


 Aちゃんを一人で日本に帰したことも正しかったかはわからない。余裕が無かった私達には見えてなかっただけで、他に良い方法があったのかもしれない。でも時間が経つにつれて、感情を全部置いてきたかのようにぼんやりとしていたAちゃんがだんだんと自然に笑うようになった。何より、無理やりに近いけれどこうやってステージに立つことが出来た。だから間違ってはいなかったと、そう思いたい。





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