「君は悪くない」7

339.聞き耳（ミン・ハミン） ページ42

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「……ハミンさん、どうしました？」

「……あ……ごめんね。ちょっと考え事してた」


 Aちゃんの心配気な声に、はっとする。そうだ、今は本番前の準備の時間だった。物思いにふけっている余裕なんかない。内心焦りながらも見上げて微笑むと、Aちゃんはほっとしながらも「珍しいですね」と口にした。


「ハミンさん、にこにこしながらも仕事は冷静に正確にささっとやる人だから」

「そうかなあ。褒めてくれるのは嬉しいけれど、私もたまにヘマするよ？ この前なんて〜、」

「……」

「……ごめん、なんか……MCステージのときを思い出して……」


 誤魔化す私に、Aちゃんは口角は上がっているけれど、ひどく悲しそうな顔を浮かべた。まるで私が今まで考えていたことが分かっているような。
 やっぱり今回に関してはだめだなあ、ちゃんとお姉さんできないかも。そう思いながら恐る恐る打ち明けると、Aちゃんは「ですよね、だと思いました」と小さく笑った。


「昨日のリハーサルの準備でも色々気を遣ってくれましたよね。すみません、ありがとうございます」

「別に気を遣ったわけじゃないけど……純粋に私がそうしたかったんだよ。ナナちゃんには無理してじゃなく、自然に笑っていて欲しいから。ただでさえ色々考えちゃうような状況なのに、これ以上悲しいことなんか考えて欲しくなかったの」

「そういうところが有難いんです。やっぱりハミンさんはお姉さんだなあって。まあ、昨日の話のオチは教えて欲しかったですけど……」

「あはは、ごめんごめん。その話はまた今度ね」


 私の返しに、Aちゃんは結局引き伸ばすんだ……と苦い顔をしたけれど、すぐに「ありがとうございます」と微笑んだ。




(……やっぱりAちゃんの話、もうかなり広まってるのかな)

 私達の会話を、全く気にしていない振りをしながらも聞き耳を立てている様子の練習生やスタッフが多くいることにふと気付く。

 昨日のリハーサルでAちゃんが大勢の前で、そしてカメラを向けられている状態でN͜͡umberの本当の解散理由を告白したこと。
 全てのグループのリハーサルが終わって衣装の整理をしていたとき、それを他のスタッフの何人かがこそこそ話してしていたのを聞いて。Aちゃんと関係深い私がいることに気付いてそのスタッフ達はすぐに話を辞めたけれど、私が「それ、どういうことですか？」と笑顔で詰め……聞いたら、詳細を教えてくれたのだ。





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