338.有り触れた日常(ミン・ハミン) ページ41
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"ハミン姉さん! 今日の俺どうです?"
本番前の楽屋。スタイリングが終わったヨンジュくんが、何処か得意気な顔で私に聞いてきた。
"いつも通りじゃない?"
"えー! いつも通りじゃダメなんですけど!"
"ふふ、ごめんごめん。ヨンジュくんはいつもかっこいいけど、今日は特にかっこいいよ。流石『国民の彼氏』。記念すべき初回MCにぴったりだと思う"
"ですよね! ありがとうございます!"
今日のステージは特に力が入っているのだろう。私が褒めるとヨンジュくんはそれはそれはご機嫌になった。そんなヨンジュくんを見て、Aちゃんが苦笑いをする。
"もー……ハミン姉さんに何言わせてるのヨンジュ……"
"ん? ナナちゃんも今日は特に綺麗だよ?"
"自分にまで気を遣ってもらわなくても……本当にすみません"
"思ったことを言っただけだよ。今日のナナちゃん、本当に綺麗で、儚すぎて、今にも消えちゃいそう"
私の言葉にAちゃんは「そうですか?」と不思議そうに首を傾げて。それから鏡に映る自分の顔を眺めてから、耳元を触りながら照れたように小さく笑った。
"……綺麗に見えるなら、それはハミン姉さんのスタイリングのおかげですよね。本当にいつもありがとうございます"
"どういたしまして。私こそナナちゃんのスタイリングができて嬉しい。素材がいいからね"
"ハミン姉さん、俺はー?"
"ヨンジュくんもね。N͜͡umberのみんなそうだよ。みんなタイプの違う美形だから、本当に楽しい"
そう笑う私に、ヨンジュくんは「ですよね!」と笑顔を浮かべて。
"あ。確かに今日のナナはめちゃくちゃキレーだし、流石素材のナナと技術のハミン姉さん!って感じだけど、本当にナナが消えちゃったらヤダな〜。お前、ただでさえふらっとどっかに行っちゃいそうなのに。
……ということで、どっか行かないようにステージまで手を繋いで行きまーす!"
"は? え? 別に何処にも行かないよ? というかこれは繋ぐじゃなく掴むでは……"
"じゃ、ハミン姉さんありがとうございました! 行ってきます!"
"ふふ、行ってらっしゃい。頑張ってね"
Aちゃんの腕を持つ手とは逆の方をぶんぶんと振りながら、ヨンジュくんは楽屋から出ていく。ヨンジュくんに無理やり引っ張られるAちゃんは呆れながら、でもどこか嬉しそうな表情で「頑張ります」と私に言ってくれて。
こんな有り触れた日常が、何よりも貴重で、幸福だったんだと。今は思う。
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アップルパイ(プロフ) - 7さん» N͜͡umberのメンバーまで好きでいてくれて嬉しいですし、素敵なボイプラ関連の作品がたくさんある中で一番好きと言っていただいてとても恐縮です……! まだまだ長いとは思いますが、完結まで書きたいと思っているので、これからも読んでいただけたら幸いです。 (10月6日 20時) (レス) @page27 id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» コメントありがとうございます! しばらくシリアスなシーンが続きますが、これからも読んでいただけたら幸いです! 本当に展開が遅くて申し訳ないのですが、更新頑張ります! (10月6日 19時) (レス) id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - N͜͡umberのみんなに会いたくなるしYouTubeでMilkywayの映像を検索したくなりました。ボイプラ系の中で一番好きな作品です。ぜひ完結までいってほしいです。応援してます (10月3日 14時) (レス) @page27 id: 643f8a8165 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 主人公の気持ちが細かく描かれていて凄く悲しくなりました。続きを楽しみに待ってます。 (10月2日 23時) (レス) @page27 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年9月17日 5時