337.最後のチャンス ページ40
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「多分、ヒロトもそうなんだよね。あまり詳しくは無いけれど、ヒロトってサバイバル番組これで三回目らしいの。日本、中国、韓国で……俺が思うよりもずっとずっと精神的に大変だったと思うし、ここで駄目だったらアイドルを諦めてしまうかもしれない」
「そうだったんだ……ヒロト、いつも明るくやってたから全然分からなかったな……」
「それを言うならソンミンもだけどね」
私がそう返すと、ソンミンは顔を上げて私の顔をじっと見つめた。
「……ナナは? ここが最後なの?」
「俺? 俺は……どうだろ。でも一度は諦めた道だし、ここにいるのも偶然でしかないからなあ。あとうちの事務所、元々演技専門の事務所で……社長も元々俳優だったから、N͜͡umber以外のアイドルグループを売り出すつもりはないと思うんだよね。そう考えると他の事務所に行くしかないけど、ソンミンの言う通り年齢がね。やっぱり現実的に最後なんじゃないかな」
「でも、ナナなら……この番組が終わったらスカウトいっぱい来ると思うよ」
「そうかなあ。うーん……他の事務所に行ってまでアイドルを続けたいかは分からないけれど……まあ、その時に考えようと思う」
私がN͜͡umberの曲を歌えないと告白して、N͜͡umberが本当の意味で死んでしまったからだろうか。いつだって流れに身を任せようと、ぼんやりと考えていた将来のことが急に鮮明に感じられて。怖くなった。私は、どう生きればいいのだろう。N͜͡umber以外の道を、どう生きたいのだろう。わからない。
(……N͜͡umber以外、か……)
やっぱり私は何処かでN͜͡umberに未練があって、縋っていたんだな。内心ため息を吐きながら、「まあ、俺のことはいいよ。今はソンミンのことが大事」とソンミンに笑う。
「……あのさ。ソンミンがこの番組を最後のチャンスだって思っていること、チームのみんなに話すべきだと思う。自分は最後かもしれないって切実なのに、喧嘩ばっかりされたら困る、嫌だ、って。ソンミンの他の人の考えを尊重する、すごく優しいところは素敵だけど、でもソンミンの気持ちもちゃんと伝えなきゃだめ。俺は、ソンミンに後悔して欲しくないよ」
「……う、ん。僕、みんなと話すよ」
「うん。きっと上手くいくよ」
「ありがとう。……ちょっとだけ、勇気貰っていい?」
頷くと、ソンミンは私を抱き締めた。その広い背中を、いつだって誰かを守ろうとする優しい背中を。私はゆっくりと撫でた。
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アップルパイ(プロフ) - 7さん» N͜͡umberのメンバーまで好きでいてくれて嬉しいですし、素敵なボイプラ関連の作品がたくさんある中で一番好きと言っていただいてとても恐縮です……! まだまだ長いとは思いますが、完結まで書きたいと思っているので、これからも読んでいただけたら幸いです。 (10月6日 20時) (レス) @page27 id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» コメントありがとうございます! しばらくシリアスなシーンが続きますが、これからも読んでいただけたら幸いです! 本当に展開が遅くて申し訳ないのですが、更新頑張ります! (10月6日 19時) (レス) id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - N͜͡umberのみんなに会いたくなるしYouTubeでMilkywayの映像を検索したくなりました。ボイプラ系の中で一番好きな作品です。ぜひ完結までいってほしいです。応援してます (10月3日 14時) (レス) @page27 id: 643f8a8165 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 主人公の気持ちが細かく描かれていて凄く悲しくなりました。続きを楽しみに待ってます。 (10月2日 23時) (レス) @page27 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年9月17日 5時