「君は悪くない」7

334.静かな場所 ページ37

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「……ナナ？」

「……ソンミン、お疲れ様」


 夕食を食べた後。人気の無いエントランスでぼんやりと暗い外を眺めていたら、後ろから名前を呼ばれた。はっとしてガラス扉に映る自分を見ると、表情が抜け落ちていて。ぱっと笑顔をつくって振り返ると、そこにはソンミンがいた。


「お疲れ様。髪がピンクだから、後ろからでもナナだってすぐに分かるね」

「あはは。ソンミンも金髪だから、他にもいるとはいえ分かりやすいよねー」

「確かに。僕達目立つから悪いことできないね」

「しないでしょ、黒髪でも」


 そんなやりとりをして笑っていたら、ふとソンミンが私の顔をじっと見て不思議そうに首を傾げた。


「というか、こんな時間にひとりでどうしたの？ 誰か待ってたりする？」

「いや、全然。ただ……ちょっと静かな場所に居たくて。外のベンチにでも行こうかなあって思ったんだけど、雨降ってたからさ」

「あ、ほんとだ。ちょっと降ってるね。予報ではずっと晴れだったし、これくらいならすぐ止みそうだけど……。……って、あれ？ 静かな場所に居たいって、何かあったの？ ナナのチームは上手く行ってそうだけど……みんな喧嘩とかしなさそうだし」

「あ〜……」


 そうか、まだソンミンのところには私のリハーサルでの出来事が伝わってないのか。まあ、知ってたらこんな普通に話し掛けたりしないよね。安堵と一緒に納得もしながら、「チームは普通に上手く行ってたよ。別のことでちょっとね」と小さく笑う。



「でも俺自身の問題だから。悩んでるわけでもなくて、色々あったことを自分の中で整理するために一人の時間が欲しいなって思っただけ。だから大丈夫、心配しないで。
……それより、ナナのチーム"は"って……ソンミンだってこんな時間にわざわざここに来てるし……何かあった？ ソンミンのチーム、上手く行ってないの？ リハーサルで先生達に何か言われたりした？」

「う……そう、だよね……分かっちゃうよね……」


 私の指摘にソンミンはぎくりとして。それから眉を下げて「ナナの言う通りだよ」と苦笑いをした。その顔には、積もった疲れが見える。ウンギのことを思い出しながら、ソンミンもチームのことで悩んでいるのだろうと察した。


「俺で良かったら話聞こうか？ 良いアドバイスは出来ないかもしれないけれど、誰かに話すだけでもすっきりするかもしれないし」

「……ありがとう」


 聞いてくれる？ そう言ったソンミンに、私は頷いた。





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