333.人間(チ・ユンソ) ページ36
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俯いてしまったナナ兄さんに、僕達は顔を見合せた。たぶん、みんなナナ兄さんが言いかけた、ヨンジュさんの言葉が想像出来たんだと思う。
(俺が……)
きっと、ヨンジュさんはナナ兄さんに「俺がナナの前から居なくなるわけないだろ」みたいなことを言ったんだ。
ナナ兄さんとの関係を「片割れ同士で親友」と表現するくらいの人だ。N͜͡umberとして活動していたときだって、ヨンジュさんは度々ナナ兄さんのことを「誰よりも尊敬しているアイドルで、一生の親友」、「誰も代わりにはならない」、「今まで運が無かったのはナナと出会うためだったんだ」と言っていた。だからヨンジュさんは言葉通り、ナナ兄さんの前から居なくなるつもりは本当になかっただろうし、それこそいつかN͜͡umberが解散しても、ナナ兄さんとの関係を続けたいと思っていたはずだ。
でも、それを神様が許さなかったんだ。
神様さえ邪魔しなければ、きっと二人はずっと一緒に笑い合っていただろうに。まるで運命のように引き寄せられて思い合う二人を、どうして引き離そうと思えるんだろう。神様の非情さに、すごく悲しくなってしまう。
「……ごめん、暗い話じゃないって言ったのに」
「大丈夫ですよ。むしろ、教えてくれてありがとうございます」
僕がナナ兄さんに掛けた言葉に、他のみんなも「そうだよ」と同調するように頷いた。
顔を見合せていた僕達は、いつの間にか全員でナナ兄さんを抱きしめていた。いつだって背筋がぴんと伸びていて、華奢ながらもミステリアスで完璧な雰囲気と経歴のせいか大きく見える人。でも今は背中を丸め、微かに震えていて、とても小さく見えた。
(ナナ兄さんも僕達と同じ、人間なんだ……)
雲の上の存在、それこそ神様みたいな人だとずっと思っていた。N͜͡umberの時とは違う、どこか抜けている部分を見ても、やっぱり僕達とは違う存在なんじゃないかって思いは変わらなくて。でも今日、ナナ兄さんの弱さを見て、この人も僕達と同じ人間で、傷を抱えた人だってことに気付いた。
「僕……明日の本番、ナナ兄さんと、ヨンジュさんのために歌います」
「そんなことしなくてもいいけれど……でも、気持ちは嬉しいよ。ありがとう、ユンソ」
顔を上げて、小さく笑うナナ兄さんの目は乾いていた。ジョンウ兄さんがさっき言っていたように、僕もナナ兄さんに泣いて欲しいなと思った。少しでも、ナナ兄さんの抱える辛さが軽くなるように。
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アップルパイ(プロフ) - 7さん» N͜͡umberのメンバーまで好きでいてくれて嬉しいですし、素敵なボイプラ関連の作品がたくさんある中で一番好きと言っていただいてとても恐縮です……! まだまだ長いとは思いますが、完結まで書きたいと思っているので、これからも読んでいただけたら幸いです。 (10月6日 20時) (レス) @page27 id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» コメントありがとうございます! しばらくシリアスなシーンが続きますが、これからも読んでいただけたら幸いです! 本当に展開が遅くて申し訳ないのですが、更新頑張ります! (10月6日 19時) (レス) id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - N͜͡umberのみんなに会いたくなるしYouTubeでMilkywayの映像を検索したくなりました。ボイプラ系の中で一番好きな作品です。ぜひ完結までいってほしいです。応援してます (10月3日 14時) (レス) @page27 id: 643f8a8165 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 主人公の気持ちが細かく描かれていて凄く悲しくなりました。続きを楽しみに待ってます。 (10月2日 23時) (レス) @page27 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年9月17日 5時