「君は悪くない」7

328.原キー（チ・ユンソ） ページ31

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 ナナ兄さんとジョンウ兄さんが話していると、僕達の元にハンビョル先生が来て。ハンビョル先生はさっきのナナ兄さんの告白もあって少し気まずそうだったけれど、ナナ兄さんがいつも通りの穏やかな表情で「キーのことですよね」と反応すると、ほっとしたように「スンオンとジェイ兄さんが特にキツそうだった。力を入れすぎちゃダメだ。いっそ半キー下げよう。少し声が裏返ってた部分以外は良かったから」と僕達に提案した。

 最初スンオンは原キーで歌うことにこだわりがあったようでそれを嫌がっていたけれど、ナナ兄さんが「本番でミスしたり無理して出したような表情を見せるくらいなら、下げた方がいいと思う。リハーサルで出来なかったことを本番では成功させる、ってのはなかなか難しいから」と冷静に説得すると、やっと納得したようだ。



「すみません……また僕達のせいで変わることになって……ナナ兄さんはいつも無理なく歌えてたのに……」

 ハンビョル先生が居なくなった後、落ち込んだ表情のスンオンがそう言うとナナ兄さんは「全然。気にしないで」と微笑んだ。


「キーの変更くらいならすぐ対応できるから。それに、俺の編曲なら半キーくらい下げた方が雰囲気に合ってるかも」

「でも……」

「……原キーで歌えないの、悔しい？」

「……はい。女性グループならまだしも、同じ男性の曲で歌えないのが悔しくて……」


 スンオンの返しに、ナナ兄さんは「そうだよね」と眉を下げた。


「俺もN͜͡umberのメインボーカルだったって自負と責任があるから、どんな曲も難なく歌えなきゃ駄目だって思ってるし、仮に歌えない曲があって何か変更することになったら凄く悔しいと思う。本番でミスするよりはましって分かってても、やっぱり気持ち的に嫌なんだよね。だからスンオンの気持ちはすごく分かる。……でもね、今回原キーのまま歌えなくてもすぐにスンオンの実力が無いって思われるわけじゃないよ。みんなだってそう。ただ、SEVENTEEN先輩は俺達に比べたら経験が違うから。SEVENTEEN先輩はキーの高い曲が多くて慣れてるだろうしね。だから、先輩達が出来ることがいま出来なくても、別におかしくないんだよ。努力すればいつかできるようになるから大丈夫。
俺達は俺達だから、オリジナルと全く同じようにしなくてもいい。俺達の、俺達らしいステージを成功させよう」

「……はい！ ありがとうございます」


 頷いたスンオンは、とても晴れやかな表情だった。





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