301.盗み聞き ページ4
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「……よし。だいぶ話し込んじゃったし、そろそろ俺は行こうかな」
「うわ、確かにめちゃくちゃ時間経ってる。……ナナ兄さん、自分の練習もあるのにわざわざ付き合ってくれてありがとうございます」
「や、それはこっちのセリフだよ。色々聞いてくれてありがとう、テレ。あ、今日した話は……」
「他の人には秘密、ですよね。わかってますよ、それくらい」
恥ずかしいから、他の人には言わないで。そう口にしようとしたところで、テレが口の前に人差し指を立てつつそう被せてきた。それに思わず笑みをこぼしてから、私もテレと同じポーズをして「うん、秘密でお願い」と返す。
「テレ、本番も頑張ってね。テレなら絶対上手くできるよ」
「はい、ありがとうございます。……俺もヨンジュさんみたいな、この曲にぴったりのかっこいいパフォーマンスしてみせます。『国民の彼氏』は無理ですけど、『ボイプラの初恋』くらいにはなりたいから」
「いいねそれ。テレが会場にいるひと全員を恋に落としちゃおうよ」
「全員は流石に……」
そんな会話を笑顔でしてから、私はテレと別れた。
自分の練習室に戻ってからしばらく練習して。体力的にはまだまだ練習できるししたいけれど、そろそろ部屋に戻らないとジョンウ兄さんが連行……心配して迎えに来てしまうだろうから、諦めて帰り支度をする。もうあんなことをされるのは懲り懲りだ。
そうして練習室を後にして廊下を歩いていたら、階段でウムティ兄さんとホンハイが話していることに気付いて。そのままふたりに話しかけようとした。でも。
「ハンビン、どうしたの? 気分悪い?」
(……ハンビン?)
ウムティ兄さんの言葉に、心臓がどきりと跳ねる。どうやら、階段からハンビンが降りてきたようだ。
「つらいの?」
「つらいわけではないんですけど……ただ、考えることが多すぎて……何度も悩んでしまうんです」
「何を?」
ウムティ兄さんの問いかけに、上手く言葉に出来なかったのか、ハンビンはただ深いため息をついた。
「ああ、どうしよう。なんで涙が出るんだろう。泣いてる場合じゃないのに……」
「そういう時もあるよ」
「上手く出来そうにないんです……」
「ハンビンなら大丈夫だよ」
(……なに、やってるんだろう。わたし)
すすり泣くハンビン。慰めるウムティ兄さんとホンハイ。
物陰に隠れ、息を潜めるように口元に手を置きながら、私はそれを聞くだけだった。
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アップルパイ(プロフ) - 7さん» N͜͡umberのメンバーまで好きでいてくれて嬉しいですし、素敵なボイプラ関連の作品がたくさんある中で一番好きと言っていただいてとても恐縮です……! まだまだ長いとは思いますが、完結まで書きたいと思っているので、これからも読んでいただけたら幸いです。 (10月6日 20時) (レス) @page27 id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» コメントありがとうございます! しばらくシリアスなシーンが続きますが、これからも読んでいただけたら幸いです! 本当に展開が遅くて申し訳ないのですが、更新頑張ります! (10月6日 19時) (レス) id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - N͜͡umberのみんなに会いたくなるしYouTubeでMilkywayの映像を検索したくなりました。ボイプラ系の中で一番好きな作品です。ぜひ完結までいってほしいです。応援してます (10月3日 14時) (レス) @page27 id: 643f8a8165 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 主人公の気持ちが細かく描かれていて凄く悲しくなりました。続きを楽しみに待ってます。 (10月2日 23時) (レス) @page27 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年9月17日 5時