327.涙 ページ30
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「ナナは俺達を心配させないようにいつも明るくやってたじゃん。常に誰かのことを考えて行動してるし、今だってそうだよ。ナナは本当に強いと思う。
……でも、辛い時は、泣きたい時は、ちゃんと泣いていいんだよ。例え過ぎたことでも、いや、もう変えようもない過去のことだからこそ、辛いこともあるじゃんか。自分の感情を無理に押し込んで我慢しなくてもいい」
泣きたい時は、ちゃんと泣いていい。その言葉に一瞬だけ目を伏せてから、私はジョンウ兄さんに笑顔を見せる。
「俺、もう涙は出ないんです。我慢してるとかじゃなくて……ヨンジュが居なくなった時にこれでもかってくらいたくさん泣いて、きっとその時に全部出し切っちゃったんですよね」
ヨンジュのお葬式のとき、自分がN͜͡umberの曲が歌えなくなったと気付いたとき、ヨンジュの命日や誕生日のとき、ふとヨンジュやN͜͡umberのことを思い出して辛くなったときも。ここに来てからもそうだった。悲しくて、辛くて、いっそ泣いてしまいたいと、泣いたら楽になれるんじゃないかと思えるようなことは今日までたくさんあった。でも、いつだって私の目は乾いたままで。
感情のまま涙を流せるみんなが羨ましいと思うこともあったけれど、今はもう、そういうものなんだと納得している。全てを粉々に壊してしまった私には、涙を流す資格なんてないんだと。亡くなった親友を想って涙を流すこともしない、冷たい最低な人間がお似合いなのだと。
私の言葉に「じゃあ、ナナは二年以上も……」と目を見開いていたジョンウ兄さんに首を振って、「良いんです」と微笑む。
「あのとき以上に悲しくて辛いことなんて、もう絶対に無いだろうから。だから、もう泣けなくても良いんです」
「……本当に?」
「はい。そもそも俺、物心ついたときから泣いたことがあんまりないんですよ。元からそういう体質だったのかなって」
演技以外で泣いた記憶ないですもん、と明るく笑う私。それでも相変わらず、ジョンウ兄さんの顔は辛そうだ。
「……そうだとしても、さっきのナナは確かに泣きたがってた。多分、ナナは今まで完璧に生きようとしてたから、無意識に涙を我慢してるだけなんだよ。そうしているうちに泣き方を忘れたんだんと思う。だから、泣き方を思い出せばまた泣けるはずなんだよ」
「そう、なのかな……」
思わずそう呟いた私に、ジョンウ兄さんは「そうあって欲しいし、俺はナナに泣いて欲しい」と返した。
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アップルパイ(プロフ) - 7さん» N͜͡umberのメンバーまで好きでいてくれて嬉しいですし、素敵なボイプラ関連の作品がたくさんある中で一番好きと言っていただいてとても恐縮です……! まだまだ長いとは思いますが、完結まで書きたいと思っているので、これからも読んでいただけたら幸いです。 (10月6日 20時) (レス) @page27 id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» コメントありがとうございます! しばらくシリアスなシーンが続きますが、これからも読んでいただけたら幸いです! 本当に展開が遅くて申し訳ないのですが、更新頑張ります! (10月6日 19時) (レス) id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - N͜͡umberのみんなに会いたくなるしYouTubeでMilkywayの映像を検索したくなりました。ボイプラ系の中で一番好きな作品です。ぜひ完結までいってほしいです。応援してます (10月3日 14時) (レス) @page27 id: 643f8a8165 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 主人公の気持ちが細かく描かれていて凄く悲しくなりました。続きを楽しみに待ってます。 (10月2日 23時) (レス) @page27 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年9月17日 5時