324.どうしようもないこと(ユ・スンオン) ページ27
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「俺だって、出来ることならN͜͡umberとして再スタートを切って、ヨンジュの夢を叶えてあげたかった。隣にいなくても、天国からでもいい、ヨンジュが焦がれ続けたオリンピック主競技場の景色を見せてあげたかった。兄さん達もそう思っていたはずです。
ファンの皆さんだって、俺達が活動し続けた方が辛くなかったかもしれない。それなのに……」
そこまで言って、ナナ兄さんは両手で顔を押さえて俯いた。
「それなのに……俺のせいで、その夢は二度と叶わなくなってしまった。結局、N͜͡umberとして歌えなくなった俺はN͜͡umberを辞めるしかなかったし、兄さん達も俺が辞めるならとN͜͡umberは解散することになりました。……N͜͡umberが解散したのは、俺のせいなんです。
そんな自分が許せなくて、許されるわけないって、俺はファンに顔を見せることも言葉を残すことも無く、全てを置いて、逃げるように日本に帰りました。それが一番やってはいけないことだっていうのは分かってたのに。あんな風に、何よりも大切で愛していたN͜͡umberを終わらせちゃ駄目だったのに……」
今にも泣き出しそうな程、弱々しくて、寂しげで、あまりにも頼りない。ナナ兄さんのこんな、波に揺られるように震えた声を聞くのは初めてだった。
ナナ兄さんはそう言ってから、少し間を開けた後、パッと顔を上げて「すみません、本当に面白くない話でした」と笑った。いつも通りの声色。
「……ナナ、貴方が自分を責めることは無いわ。全部、仕方ないことだった」
「そうだよ。このことを知って、君を責めようとする人は誰もいないはずだ」
LIP J先生とグヨン先生の掛けた言葉に、ナナ兄さんは何か言おうとして。でもやっぱり辞めるように首を振った。
「それでも……もしも俺があの時『milky way』を歌えたら、どんなに良かっただろうって。ふとした時に思うんです」
「……治す方法はないの?」
「一時期病院には通っていました。でも……」
pH-1先生の質問に、ナナ兄さんは一瞬目を伏せて。
「……もう、いいんです。世の中、どうしようもないことはたくさんあって。全てを拾い上げることは無理だから、色んなものを諦めて前に進むしかないんですよね。それがどんなに大切なものだったとしても。そうしないと駄目なんですよね」
こんなにも痛々しくて、優しくて、綺麗で、儚い笑顔を。僕はこれから先見ることはないだろう。ナナ兄さんの笑顔を見て、僕はそう思った。
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アップルパイ(プロフ) - 7さん» N͜͡umberのメンバーまで好きでいてくれて嬉しいですし、素敵なボイプラ関連の作品がたくさんある中で一番好きと言っていただいてとても恐縮です……! まだまだ長いとは思いますが、完結まで書きたいと思っているので、これからも読んでいただけたら幸いです。 (10月6日 20時) (レス) @page27 id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» コメントありがとうございます! しばらくシリアスなシーンが続きますが、これからも読んでいただけたら幸いです! 本当に展開が遅くて申し訳ないのですが、更新頑張ります! (10月6日 19時) (レス) id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - N͜͡umberのみんなに会いたくなるしYouTubeでMilkywayの映像を検索したくなりました。ボイプラ系の中で一番好きな作品です。ぜひ完結までいってほしいです。応援してます (10月3日 14時) (レス) @page27 id: 643f8a8165 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 主人公の気持ちが細かく描かれていて凄く悲しくなりました。続きを楽しみに待ってます。 (10月2日 23時) (レス) @page27 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年9月17日 5時