「君は悪くない」7

322.代表曲（ユ・スンオン） ページ25

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「きっかけは……聞くまでもないな」

 ソクフン先生の言葉に、ナナ兄さんは頷く。


「……墓場まで持って行くつもりだったけれど、これが隠し通せるものではないことは何処かで分かってました。N͜͡umberのメインボーカルだった俺がまた表舞台に立つ以上、N͜͡umberの曲から逃げ続けるのは現実的ではないですから。
……全然面白い話じゃないんですが、いいですか？ 」

 もちろん。ソクフン先生が促すのと同じように自分達も頷く。


「ヨンジュの葬式と告別式が終わって、記者の追いかけも無くなって落ちついたとき。シアン兄さんとミンジュン兄さんが『ヨンジュをちゃんと見送る為に、ヨンジュの納骨堂の前で三人で歌わないか』って提案してくれたんです。俺はすぐに賛成しました。それが、一緒にステージに立ってきた俺達にとっての一番の手向けだと思ったから。俺も、そうしたらヨンジュの死を受け入れて前向きになれる気がして。
歌う曲は悩むことなく『milky way』になりました。『milky way』は俺達にとって一番思入れのある曲だし、何よりこの曲は俺とヨンジュが一緒にコンセプトから考えたから。……俺も、この曲が一番好きでした」

 懐かしむように、ナナ兄さんが少し笑う。


 『milky way』。2020年7月7日、ナナ兄さんが19歳を迎えた誕生日に発売された、ナナ兄さんがセンターの曲だ。人気メンバーだったナナ兄さんの初表題曲センター、そして何よりもコンセプトの良さから、音盤も音源も圧倒的な売上を見せた。MVも今では10億回再生を上回っている。まさにN͜͡umberの代表曲。ナナ兄さんも、当時のインタビューで「この先『milky way』を超える曲は作れないかもしれない」と言っていた。

 一つ一つを見分けることが出来ないくらい、たくさんの星の集合体でつくられた天の川。その中にある名前の無い小さな小さな星が、近いようで遠く遠く離れた一等星を想った曲。
 MVでは、アイドル役のヨンジュさんを「誰かのものになるくらいなら孤独なままでいて欲しい」という気持ちと「たくさんの愛に囲まれて楽しく幸せであってほしい」という反対の気持ちで想い苦しみながらも、最終的に「自分を知らなくていい、自分のいる天の川を綺麗に思ってくれればそれで満足だ」と寂しげに笑って人混みに消えていくファン役のナナ兄さんが描かれている。

 切ない歌詞ながらも明るい曲調のこの曲は多くのアイドルファンに共感され、今でも音源が色んな場所で使われている。





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