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320.失ったもの(ユ・スンオン) ページ23





「……そう、かもしれませんね。ちょっと浮いているというか、悲しすぎたかもしれないです」

 ナナ兄さんが眉を下げて笑う。笑ってはいるけど、何処か寂しそうな表情だった。それを見て、ソクフン先生が申し訳なさそうに眉を顰める。


「いや、そんなことは……すまない、思っても口に出すことじゃなかった」

「あっ、いえ! 気にしないでください。ソクフン先生がそう感じるのは当然だと思います。『Home』の歌詞は自分が書いたものだし……カバーしたこともありますから。N͜͡umberとしての自分がステージに立ったのは、それが最後だったんですよね。しかもたまたまその時と同じ髪色で……」


 偶然ってすごいですよね、とナナ兄さんは自分のピンク色の髪に触れる。



「……今の自分がこの曲を選べば、N͜͡umberの時の自分を知っている人が何とも言えない気持ちになるとは分かってました。少なくとも喜ばれることはないと。
俺もこの曲を最初に見たとき、N͜͡umberとして幸せだった時期を思い出して辛くなって……。でも、だからこそ、今の俺ならあのとき以上にこの歌詞を上手く歌えると思ったんです」

「……君は、本当に強いね」

「いや、そんなこと……正直、他の誰かを追い出したくなくて選択肢がほぼ無かったってのもありますし……」


 ナナ兄さんが苦笑いを浮かべて言うから、先生達は「優しい性格が仇になったね」と少し笑った。




「ソクフン先生の言う通り、俺は失った大切なもの……俺にとって家のようなあたたかい存在だった、かつての仲間であり親友のキム・ヨンジュと……N͜͡umberの夢を想いながら歌いました」

「N͜͡umberの夢?」

「……オリンピック主競技場に立つこと。ヨンジュの夢でした。どんなに辛くても、忙しくても、ヨンジュはその夢のためならっていつも笑ってて。きっと、ヨンジュにとっての拠り所だったんでしょうね。だから、俺も一緒にその夢を叶えたかった」

「そうか……きっと、あんな事がなければ……」


 ソクフン先生が残念そうに言った。
 あんな事がなければ。確かに、ヨンジュさんが亡くなってN͜͡umberが解散しなければ。N͜͡umberがオリンピック主競技場の立つことは時間の問題だったはずだ。あんなに成功して、国民的アイドルグループとしての地位を築いていた最中だったのだから。



「……はい。俺のせいでN͜͡umberが解散しなければ——」


 そこまで言って、ナナ兄さんはハッとしたように口を閉じた。





321.「俺のせい」(ユ・スンオン)→←319.本物の悲しみ(ユ・スンオン)



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アップルパイ(プロフ) - 7さん» N͜͡umberのメンバーまで好きでいてくれて嬉しいですし、素敵なボイプラ関連の作品がたくさんある中で一番好きと言っていただいてとても恐縮です……! まだまだ長いとは思いますが、完結まで書きたいと思っているので、これからも読んでいただけたら幸いです。 (10月6日 20時) (レス) @page27 id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» コメントありがとうございます! しばらくシリアスなシーンが続きますが、これからも読んでいただけたら幸いです! 本当に展開が遅くて申し訳ないのですが、更新頑張ります! (10月6日 19時) (レス) id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - N͜͡umberのみんなに会いたくなるしYouTubeでMilkywayの映像を検索したくなりました。ボイプラ系の中で一番好きな作品です。ぜひ完結までいってほしいです。応援してます (10月3日 14時) (レス) @page27 id: 643f8a8165 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 主人公の気持ちが細かく描かれていて凄く悲しくなりました。続きを楽しみに待ってます。 (10月2日 23時) (レス) @page27 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年9月17日 5時

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