「君は悪くない」7

319.本物の悲しみ（ユ・スンオン） ページ22

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「賢く完成させたね。前よりみんなの魅力が出てる」

 リハーサルが終わって。まずヨンジュン先生がそう言って下さってほっとした。ジョンウ兄さんもナナ兄さんも、振付や動線をかなり試行錯誤していたから。二人ともダンスが上手いのに、わざわざ僕達のために曲の雰囲気は壊さずに難易度を下げた振付を考えてくれたと思うと申し訳なかったけれど、こうやって褒められると気持ちが軽くなった。

 今回もユンジョンウがユンジョンウしてくれたね、とヨンジュン先生が続けて言うと、ナナ兄さんはツボに入ったのか小さく笑っていた。





「最後にナナに関してだけど……まず編曲がすごく上手いね。構成やメロディーはオリジナルとほとんど変わってないけれど、オリジナルの優しく包み込むようなあたたかい家とは違って、ナナの編曲はぽつんと寂しく立つ不安定で寒い家って感じがする。これはこれですごくいいと思うよ。みんなの声や雰囲気に合っているし」

 一人一人の講評をして、最後にナナ兄さんの番。ハンビョル先生がそう言った。


「ありがとうございます。編曲は少し悩んだんですけど、形になって良かったです」

「流石ナナだね。ボーカルもミスもなくすごく良かったし………後半のパートなんて、正直泣きそうだった。どうしたらこんな儚い歌声を出せるんだろう。本当にすごいよ」

「本番はハンカチを用意しないとですよね」

「アハハ……良かったなら何よりです」


 ハンビョル先生とソルジ先生がそう話しているのを、ナナ兄さんは苦笑いしながらも「一番最初のレッスンで色々気付けたので、先生方のおかげです」と頭を下げた。



「ナナ。君の歌声は本当に本当に……すごく悲しい。僕はN͜͡umberの時のナナの方が上手い、魅力があった、って何度も言ってきたけど……これはN͜͡umberの時では絶対に出せなかった歌声だと思う。初めて聴いたよ。
その……こんなことを言うのは不謹慎かもしれないけど……君が、失ったものをどれだけ大切に思っていたか、そしてそれを失った悲しみが痛いほど伝わる。きっと、君以上にこの歌を悲しく歌える人は何処を探してもいないと思う。これは、つくろうと思ってつくれるものじゃないから」

 神妙な顔をしたソクフン先生。先生の言う通りだった。ナナ兄さんの歌声や表情は想像したものじゃない、誰かを参考にしたものでもない、ナナ兄さん自身の本物の悲しみだった。あまりに苦しそうで、触れてもいいのか分からないくらいに。






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