300.理想(キム・テレ) ページ3
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「でもやっぱり、終わりが良くなかったからってそれまでの全てを否定されて無かったことにされるのは悲しいっていうか……だって、ヨンジュがリアコなアイドルとしてファンを笑顔にしていたのは紛れもない事実だから。それを忘れて欲しくない気持ちはあるんだよね。よく言うでしょ、人は忘れられたときに本当の意味で死ぬんだって。
だから、テレみたいに今もあの時のヨンジュを好きで、尊敬してくれる人がいると思うと、すごく救われた気持ちになる。今もヨンジュは誰かのアイドル……理想として生きているんだって」
そう言って、ナナ兄さんは俺の顔をまっすぐに見てふわりと微笑んだ。
「俺、ヨンジュのことが好きな人が好きだから。だからテレのこと好き。本当にありがとう」
「……だからナナ兄さん、ハンビン兄さんのことが大好きなんですね」
「…………なんでここでハンビンが出てくるの」
気恥ずかしくなってしまって、つい冗談でハンビン兄さんの名前を出したら、ナナ兄さんは少し顔を引き攣らせた。
(間違ってはないと思うんだけどなあ……)
前から付き合いがあるフェテク兄さんは別として、ナナ兄さんが練習生の中でハンビン兄さんのことをかなり特別に思っているのは見て感じられるから。ただナナ兄さんは同い歳で同じ日本人のケイタ兄さんともかなり仲がいいけれど、それとは何だか違うというか。
「すみませんって。でも、ナナ兄さんって本当にヨンジュさんのことが大好きなんですね」
ケイタ兄さんが「親友」に近いものだとしたら、ハンビン兄さんは。 そんなことを考えながらそう言うと、ナナ兄さんは「そりゃね」とちょっと眉を下げて笑った。
「仲間だし親友だし、ロールモデルだし」
「具体的にどんなとこが好きなんですか?」
「……全部?」
「全部って」
吹き出しそうになった俺に、ナナ兄さんが「確かに欠点もあるけれど、そこも含めて好きだし尊敬してるの」と苦笑いをした。
「……俺、ヨンジュが理想のアイドルだったんだよね。でもほら、俺とヨンジュって色々正反対でしょ。俺はどうやってもヨンジュみたいになれないから……だからせめてヨンジュがそのままでいられるように、ヨンジュの欠点をカバーできる完璧な人になろうって思ったんだよね」
「……それってだいぶ、愛、ですね」
「なにそれ」
ナナ兄さんがどうして仮面を付けてまで完璧なアイドルでいようとしたのか。その理由が少し、分かった気がした。
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アップルパイ(プロフ) - 7さん» N͜͡umberのメンバーまで好きでいてくれて嬉しいですし、素敵なボイプラ関連の作品がたくさんある中で一番好きと言っていただいてとても恐縮です……! まだまだ長いとは思いますが、完結まで書きたいと思っているので、これからも読んでいただけたら幸いです。 (10月6日 20時) (レス) @page27 id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» コメントありがとうございます! しばらくシリアスなシーンが続きますが、これからも読んでいただけたら幸いです! 本当に展開が遅くて申し訳ないのですが、更新頑張ります! (10月6日 19時) (レス) id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - N͜͡umberのみんなに会いたくなるしYouTubeでMilkywayの映像を検索したくなりました。ボイプラ系の中で一番好きな作品です。ぜひ完結までいってほしいです。応援してます (10月3日 14時) (レス) @page27 id: 643f8a8165 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 主人公の気持ちが細かく描かれていて凄く悲しくなりました。続きを楽しみに待ってます。 (10月2日 23時) (レス) @page27 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年9月17日 5時