311.弱い自分 ページ14
・
「……私、ジャンハオ兄さんのところに行かなきゃ。ジャンハオ兄さん、多分まだ寝てないですよね」
ヒーヒー言いながらなんとかカップラーメンを完食し、口の中に残る辛さを誤魔化すために水をたくさん飲んだあと。そう言ってソファから立ち上がった私に、フェテク兄さんが「ハオ？」と首を傾げる。
「ハオなら多分まだ起きてるだろうけど……こんな時間にハオになんか用あるの？」
「ハンビンが悩んで泣いてたこと、ジャンハオ兄さんに言わなきゃなって。ジャンハオ兄さんと話したら、きっとハンビンも元気出るだろうし」
「だったら僕からハオに話しとくよ。リーダーだし、そういうのは僕がやらなきゃ」
「や、私から話したいこともあるって言うか！ とにかく私がしたいことだから大丈夫です。もちろん、フェテク兄さんからも話してくれたらすごくありがたいですけど……」
焦りながらそう口にした私に、フェテク兄さんは更に不思議そうな顔をする。それでもすぐに納得したように「……そっか」と微笑んだ。
「わざわざありがとう、A。Aのそういう、人の弱さや痛みに気付いたら自分のことを放り出してでも寄り添おうとする優しいところ、僕は本当に好きだし尊敬してる。……でもね、A。Aが誰かの弱さや痛みに気付いて寄り添うように、Aだってそうされるべきなんだよ。Aの本当の弱さや痛みを知っていて、A自身もそれを見せられるのが僕だけじゃだめなんだ」
「……でも、私は……」
フェテク兄さんに掛けられたその言葉に、目を伏せる。些細なことから大きすぎるものまで、今この場所で私の素性や過去、そして弱さを誰よりも知るフェテク兄さんが、私を心配してこう言ってくれるのはわかる。それでも。
「……私はこれ以上、弱くなりたくないんです。誰が望んだとかじゃなく、私が弱い自分を許せないから」
「……」
「……
「…………そっ、か」
何か言いたげな顔をして、でもそれを誤魔化すように首を小さく振ってからフェテク兄さんはそう口にする。ひどく傷付いたようなその顔に罪悪感が湧いて、思わず「……ごめんなさい」と謝る私に、フェテク兄さんは「いいよ」と小さく微笑んだ。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1892人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アップルパイ(プロフ) - 7さん» N͜͡umberのメンバーまで好きでいてくれて嬉しいですし、素敵なボイプラ関連の作品がたくさんある中で一番好きと言っていただいてとても恐縮です……！ まだまだ長いとは思いますが、完結まで書きたいと思っているので、これからも読んでいただけたら幸いです。 (10月6日 20時) (
レス) @page27 id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» コメントありがとうございます！ しばらくシリアスなシーンが続きますが、これからも読んでいただけたら幸いです！ 本当に展開が遅くて申し訳ないのですが、更新頑張ります！ (10月6日 19時) (レス) id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - N͜͡umberのみんなに会いたくなるしYouTubeでMilkywayの映像を検索したくなりました。ボイプラ系の中で一番好きな作品です。ぜひ完結までいってほしいです。応援してます (10月3日 14時) (レス) @page27 id: 643f8a8165 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 主人公の気持ちが細かく描かれていて凄く悲しくなりました。続きを楽しみに待ってます。 (10月2日 23時) (レス) @page27 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アップルパイ | 作成日時：2023年9月17日 5時
