310.子供舌 ページ13
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「…………からい……」
「え? 辛い? これ一番辛くないやつだったんだけど……」
麺を啜った後に思わず顔をしかめる私に、フェテク兄さんは困惑しながら「ごめん、美味しくなかった?」と聞いてきて。それに私は首を振る。
「や、美味しいですけど……ただ、私が辛いのに弱すぎて……口の中がひりひりします……」
「Aって昔からほんと子供じ……辛いの苦手だよねえ。韓国だと困るでしょ、辛い食べ物多いし」
「N͜͡umberのときは避けられたんですけどね。あってもシアン兄さんやヨンジュが代わりに食べてくれたから。でもここだとなかなか……」
子供舌。そう言われかけたけれど、そこはスルーする。実際、私は辛いものや苦いもの、酸っぱすぎるものなど刺激が強い食べ物が苦手で。平気な振りをして食べることはできるけれど(ずっと前にカクテル作りに失敗してレモンを食べたとき、本当はめちゃくちゃすっぱいし苦いしで内心「ん゛〜!!!!」となったけれどなんとか表情を変えずに終われた)、好んで口に入れたくはない。子供舌と言われるのも無理はなかった。
特に辛いものは苦手だし、実家の食卓にもあまり出なかったから、韓国に来たときは大分びっくりした。赤い食べ物ばかりで。それを毎日のように食べている韓国の人は本当に凄いと思う。
超甘党のミンジュン兄さんは例外として、シアン兄さんは辛いものが食べられるどころかむしろ大好きだし、ヨンジュだって「俺は何でも美味しく食べれちゃうから〜」とどんなに辛そうなものもペロリと平らげていた。だからお弁当や差し入れで辛いものがあるときはシアン兄さんとヨンジュがミンジュン兄さんと私の分まで進んで食べてくれて、すごく助かったんだった。
でも、今はそうもいかない。食堂でみんなと同じメニューが提供されるから避けようがないし、誰かに「これ苦手だから代わりに食べて」と言うのも何だか嫌だ。私が出来るのは少食を理由に少なめによそってもらうか、たくさん食べる練習生に「これも食べる?」とそれとなく押し付け……分けてあげることで。でもそれにも限界があるから、残った分は我慢しながら食べているという状況だ。
「メンバーや僕以外にも苦手なものは苦手だって言えばいいのに。……はい、水」
「いや……なんか恥ずかしいじゃないですか。好き嫌いなんてこどもみたいだし」
苦笑いをしながら、「ありがとうございます」と私はフェテク兄さんから水を受け取った。
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アップルパイ(プロフ) - 7さん» N͜͡umberのメンバーまで好きでいてくれて嬉しいですし、素敵なボイプラ関連の作品がたくさんある中で一番好きと言っていただいてとても恐縮です……! まだまだ長いとは思いますが、完結まで書きたいと思っているので、これからも読んでいただけたら幸いです。 (10月6日 20時) (レス) @page27 id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» コメントありがとうございます! しばらくシリアスなシーンが続きますが、これからも読んでいただけたら幸いです! 本当に展開が遅くて申し訳ないのですが、更新頑張ります! (10月6日 19時) (レス) id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - N͜͡umberのみんなに会いたくなるしYouTubeでMilkywayの映像を検索したくなりました。ボイプラ系の中で一番好きな作品です。ぜひ完結までいってほしいです。応援してます (10月3日 14時) (レス) @page27 id: 643f8a8165 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 主人公の気持ちが細かく描かれていて凄く悲しくなりました。続きを楽しみに待ってます。 (10月2日 23時) (レス) @page27 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年9月17日 5時