「君は悪くない」7

299.肯定（キム・テレ） ページ2

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「……テレ、大丈夫？」

 いつの間にか顔を上げていたナナ兄さんがそう声を掛けてきた。


「あ……すみません。ちょっと、当時のことを思い出してて」

「ううん。こっちこそごめん。こんな気分の良くない話して」

「それは全然大丈夫です。ただ、ナナ兄さんはどれだけ辛かっただろうなって思って……。俺でもその……酷い言葉とか、そういうの聞いたから」

「ああ……気にしないで。確かに当時は堪えたけれど、もう過ぎたことだから。今はそういうものだって思ってる」


 有名税ってやつだよ。そう言ったナナ兄さんには、怒りとかそういうのは全く感じられなかった。不思議だった。ナナ兄さんがヨンジュさんを殺めたファンや、これ見よがしに心無い言葉を向けてきた人達を恨むのは当然のことなのに。人を恨むことができないくらいナナ兄さんが優しすぎるのか、それとも——。

 そう思ったところで、ナナ兄さんが「話、戻していいかな？」と聞いてきて。それに慌てて頷くと、ナナ兄さんは「ありがとう」と笑った。




「ヨンジュがあんなに近い距離でファンの方と接しなきゃ、こうはならなかったかもしれない。その考え方はやっぱり間違ってないと思う。……それでも俺は……ファンを誰よりも大切に思って、誰よりもたくさんの愛を与えていたヨンジュの姿が大好きだったし、自分にはできないことだって尊敬していたから」

 そこまで言って、ナナ兄さんは「それにね、」と微笑んだ。


「何よりヨンジュの理想のアイドルが『ファンと近いアイドル』だったし、純粋にヨンジュって素でもああいう人なんだよね。出会ったときからそうだった。誰にでも分け隔てなく惜しみなく愛嬌を振りまく、太陽みたいに明るい人。もちろんアイドルでいるときはキャラクターとしてつくったり誇張してかっこつけていた部分もあったけれど、それもファンが喜ぶ姿が見たいって一心でそうしてたから。ヨンジュにとってファンはすごく大切な存在で、そんなファンには一番かっこいい自分を見せたかったんだと思う。
そんなヨンジュの、ファンと近かったところを良くなかったって否定したら、ヨンジュの理想も、素の姿も、ファンを思う気持ちも全部否定してしまう気がして……だから、例えどんなに沢山のひとがヨンジュのアイドル像を否定したとしても、俺は変わらず肯定し続けたいし、そうしなきゃいけないと思う」

 俺はヨンジュの仲間で、親友だから。

 そう、ナナ兄さんは穏やかな声で言った。





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