末期症状(K.K) ページ6
A「小島おはよ！」
一瞬で気付いてしまった。
我ながら気持ち悪い。
小島「…おはよ」
明らかに違う。
昨日までのそれとは、確実に。
A「朝ご飯食べてへんからめっちゃお腹空いたわあ、」
佐野「寝坊っすか？」
A「せいかーい！」
隣に座るAの香り。
それは俺がよく知っているのとは全くの別物。
だけどどこかで嗅いだことがあるようなないような、何となく知っている香り。
"香水変えた？"なんて聞いたら気持ち悪いよな。
だけど気になって仕方がないのは全てこいつに抱いている恋心のせい。
こんな些細な変化にすら敏感になってしまった。
完全に片思いの末期症状だ。
佐野「これ食べます？」
A「えっ！これ私が好きなやつ！」
佐野「さっき貰ったんすよ、スタッフさんに」
A「やった〜！」
無邪気に笑うAの横顔がすごく遠くに感じる。
楽屋の扉が開いた。
それと共に聞こえる挨拶の声。
その瞬間、気付いてしまった。
これもやはり我ながら気持ち悪いと思う。
末澤「何それ」
A「佐野に貰った！」
末澤「へー」
Aから香っているのは誠也くんが愛用している香水だ。
できれば気付きたくなかった。
2人が付き合っているだとか、昨晩泊まってそのまま2人で現場入りしたとか、バレないように少しだけ時間をズラしたとか、全部、全部。
だけど見て見ぬふりはできなくて、それはもう事実として俺の脳内に刻まれてしまっていて。
悔しい？悲しい？
どちらも違う。
抱いたことのない感情がぐるぐると俺を支配する。
これもきっと片思いの末期症状だ―
と、思い込むことにした。
そうすれば少しは楽になる。
誰も悪くない。
誠也くんもAも、俺も。
片思いが実らなかった、ただそれだけのこと。
A「おいひい〜」
佐野「幸せそうに食べますねえ、Aちゃん。」
A「やって幸せやもん」
幸せ、か。
そらそうやろな。
文字通り"匂わせ"なんかして、誠也くんってやっぱりまだまだお子ちゃまやな。
俺やったら絶対そんなんせえへん。
密かに自分のものにして腹の中で笑う方が優越感あるやんか、なんて性悪な考えが浮かぶ。
こんなのただの負け惜しみでしかない。
敗者の戯言。
A「小島も1口いる？」
あーあ、やっぱり俺は末期や。
誠也くんのものだと分かっていても、まだAのことを愛おしく思うだなんて。
小島「…ん、欲しい」
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» 最後まで楽しんで頂き、こちらこそありがとうございました！今後も読んで頂けるように頑張ります！ (2022年8月17日 16時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 紅一点設定の短編集ずーっと楽しく読ませて頂きました！たくさんの素晴らしいお話をありがとうございました😍また新しい作品も楽しみにしています💕 (2022年8月17日 1時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - なつきさん» ありがとうございます！次の作品もお楽しみに…！ (2022年8月16日 9時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - 素敵なストーリーをありがとうございました。新しい作品を楽しみにしています！ (2022年8月16日 1時) (レス) @page50 id: 292579ac7e (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - とんとんまるさん» 素敵なコメントありがとうございます！とっても嬉しいです。今後のお話もお楽しみに…！ (2022年8月13日 6時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年7月13日 2時
