失恋は何の味(M.S) ページ34
Aちゃんが大好きなパンケーキ屋さん。
2人で何度か来たけれど、毎回行列で入れなかった。
その度に"また今度来よ"と約束を繰り返して、だけど実現しなくて。
店員「いらっしゃいませ〜」
今日、やっとの思いで入店することができた。
店員「ご注文お決まりになりましたら…」
道枝「あ、この苺のやつください。あとカフェオレも。」
店員「かしこまりました」
Aちゃんが1番好きなメニューを注文し、ふと窓の外に目をやる。
ふわふわと流れ行く雲はまるでメレンゲのよう。
店内を漂う甘い香り、北欧風のお洒落なインテリア。
如何にもAちゃんが好きそうな雰囲気に思わず頬が緩む。
店員「おまたせしました」
暫くして運ばれてきたパンケーキは思っていた数倍豪勢だった。
たっぷり乗せられた苺と生クリームに心が踊る。
道枝「いただきます」
1口食べた瞬間、口の中に幸せが広がった。
見た目の割に甘過ぎず、だけど苺はしっかり糖度高めで絶妙なバランス。
柔らかくしっとりした生地と滑らかな生クリームがよく合う。
アイスカフェオレを喉に流せば、程良い苦味が心を落ち着かせてくれる。
根っからの甘党であるAちゃんお墨付きの理由が分かった。
値段も案外リーズナブルで、いつも行列ができていることにも納得。
2人で来たかったなあ―
再び窓の外に視線を移してそんなことを考える。
幸せそうにパンケーキを頬張るAちゃんを独り占めしたかった。
お互い違う味を頼んで、"1口頂戴"なんて言い合いたかった。
だけどその望みは叶わない。
道枝「ご馳走様でした」
会計を済ませて店を後にした。
あんなに美味しいパンケーキを食べたのに、どこか満たされなくて切なくて。
いつどこで何をしていたって俺の脳内を埋め尽くすAちゃんが憎い。
同じグループのメンバー。
それは俺の気持ちが報われないことを意味する。
徐に取り出したスマホでメッセージを送る。
"パンケーキ美味しかったです"と。
きっと今日中に返信がくることはない。
だけど別にそれでもいい。
これはあくまで自己満足の感想文。
Aちゃん、今頃何してるんやろ。
きっと付き合ったばかりの彼氏さんと過ごしてるんやろな―
昼下がりの東京。
喧騒に紛れて涙を堪える。
俺にとっての失恋はパンケーキの味がした。
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» 最後まで楽しんで頂き、こちらこそありがとうございました！今後も読んで頂けるように頑張ります！ (2022年8月17日 16時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 紅一点設定の短編集ずーっと楽しく読ませて頂きました！たくさんの素晴らしいお話をありがとうございました😍また新しい作品も楽しみにしています💕 (2022年8月17日 1時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - なつきさん» ありがとうございます！次の作品もお楽しみに…！ (2022年8月16日 9時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - 素敵なストーリーをありがとうございました。新しい作品を楽しみにしています！ (2022年8月16日 1時) (レス) @page50 id: 292579ac7e (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - とんとんまるさん» 素敵なコメントありがとうございます！とっても嬉しいです。今後のお話もお楽しみに…！ (2022年8月13日 6時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年7月13日 2時
