片思いの限界(N.D) ページ20
Aはいつだって自分勝手で俺の気持ちを考えることなんて絶対にしない。
だけどそんなところも愛おしくて、我儘すらも恋心を増幅させる材料と化して。
この先もずっと振り回される運命だと確信していた。
それなのに―
A「私好きな人おんねん」
その言葉で思い描いていた未来が間違いなのだと悟った。
西畑「"好きな人"？」
思わずオウム返しをする。
それに対して頷いたAはいつもと違う神妙な面持ち。
俺は勝手に好きでいるだけ。
ただそれだけの立場。
だけど何となく、本当に何となく―
結ばれるような気がしてしまっていた。
本当に自分勝手なのは俺の方だった。
Aの気持ちなんて考えていなかった。
振り回されるだなんて被害者ぶった言葉はこんな俺に似つかわしくない。
A「ずっと好きやねん、ずっと」
西畑「…"ずっと"？」
A「うん、"ずっと"」
"ずっと"ってどのくらいなんやろ。
俺がAを好きになったのは―
いつだったか思い出せない。
そのくらい、遥か遠い昔の出来事。
A「…けど片思いやねん」
西畑「あー…そうなん？」
Aの魅力に気が付かない男がこの世にいるのか―
俺は少しだけ驚いた。
A「もう限界かもせえへん」
西畑「"限界"？」
再びオウム返しをした。
俺の片思いに限界はない。
色褪せることのない思いを抱き続けるだろう。
Aがその思いに応えてくれないことは分かっていながら。
A「口にしてしまいそうやねん」
西畑「それの何があかんの？」
A「関係崩れるん嫌やもん」
数回瞬きをしたAが俺から目を逸らした。
女性らしく丸みを帯びた頬がほんのり染まる。
A「…大ちゃんやで」
西畑「えっ…？」
A「大ちゃんのこと…ほんまに好きやねん」
振り回していたのは俺の方だったのか―
西畑「…口にしてるやん」
A「我慢できひんかった」
西畑「関係崩れたらどうするん？」
この期に及んで少し意地悪な質問をしてしまった。
Aの瞳が潤む。
A「…私ってほんま我儘やんな」
ちゃうで、我儘にさせたんは俺やで。
西畑「ごめん、」
A「…何が？」
西畑「ほんまは俺も―」
振り回し振り回され、互いに互いの気持ちを募らせて。
こういうの何て言うんやっけ？
両片思い、か。
西畑「好きやで」
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» 最後まで楽しんで頂き、こちらこそありがとうございました！今後も読んで頂けるように頑張ります！ (2022年8月17日 16時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 紅一点設定の短編集ずーっと楽しく読ませて頂きました！たくさんの素晴らしいお話をありがとうございました😍また新しい作品も楽しみにしています💕 (2022年8月17日 1時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - なつきさん» ありがとうございます！次の作品もお楽しみに…！ (2022年8月16日 9時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - 素敵なストーリーをありがとうございました。新しい作品を楽しみにしています！ (2022年8月16日 1時) (レス) @page50 id: 292579ac7e (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - とんとんまるさん» 素敵なコメントありがとうございます！とっても嬉しいです。今後のお話もお楽しみに…！ (2022年8月13日 6時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年7月13日 2時
