いつか(T.K) ページ19
A「恭平、」
Aの声が好き。
昔からずっと変わらないその響きが、めちゃくちゃに。
A「恭平？」
女の人にしては少し低いんかな？
だけど柔らかくて優しくて、俺の心を溶かすようなトーン。
A「恭平！！」
高橋「ん…今何時…？」
重い瞼を開いた。
すぐにAの顔が視界を埋め尽くす。
もう何度目か分からない目覚めの口づけ。
ほぼ習慣のようなもので、俺にとっては当たり前の幸せ。
A「7時やで」
高橋「7時か…」
今日も朝から撮影がある。
体を起こさなくてはならない。
A「部屋戻る」
高橋「…もう行くん？」
A「やって準備せなあかんもん」
高橋「…もうちょい」
ゆっくりとAを抱き寄せた。
仮住まいであるホテルで互いの部屋を行き来する日々。
いつかは一緒に暮らしたいけれど、その夢が叶う日はこないかもしれない。
A「…恭平、苦しい」
高橋「んー…」
図らずも腕に力が入る。
何があったって手離したくない、なんて思ったり。
A「準備せんと遅刻する」
高橋「うん」
A「遅刻したら迷惑かける」
高橋「うん」
A「仕事なくなる」
高橋「うん」
A「"うん"ちゃうやろ！」
きっとこの世に永遠はない。
いつかは終わりが来てしまう。
だからこそ"今"に対して精一杯でいたい。
全力でAを愛していたい。
そう思うんは当たり前やんな？
聞き慣れた心地の良い声だって、いつ聞けなくなるか分からない。
朝起きてすぐに交わすキスも、当たり前のようで当たり前じゃない。
触れることができなくなるかもしれない。
好きだと伝えることすら叶わなくなるかもしれない。
いつかそんな時がきた時に、悔いのないように。
A「恭平、そろそろええ加減に…」
高橋「好き」
A「え？」
高橋「…ほんまに好き」
A「…どうしたん？」
不安気な声が部屋に響く。
A「…何かあったん？」
高橋「何もない」
A「嫌な夢見たん？」
高橋「…俺ちっちゃい子か何か？」
A「やって何か今日おかしいで、恭平」
昨晩事務所に呼び出されてスタッフさんやマネージャーさん、偉い人達から言われた"別れなさい"の一言。
脳内を支配するその言葉が俺を苦しめる。
"いつか"は今で、今はその"いつか"で。
やはり永遠なんて存在しない。
高橋「…A、ごめんな、」
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» 最後まで楽しんで頂き、こちらこそありがとうございました！今後も読んで頂けるように頑張ります！ (2022年8月17日 16時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 紅一点設定の短編集ずーっと楽しく読ませて頂きました！たくさんの素晴らしいお話をありがとうございました😍また新しい作品も楽しみにしています💕 (2022年8月17日 1時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - なつきさん» ありがとうございます！次の作品もお楽しみに…！ (2022年8月16日 9時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - 素敵なストーリーをありがとうございました。新しい作品を楽しみにしています！ (2022年8月16日 1時) (レス) @page50 id: 292579ac7e (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - とんとんまるさん» 素敵なコメントありがとうございます！とっても嬉しいです。今後のお話もお楽しみに…！ (2022年8月13日 6時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年7月13日 2時
