君を許した夜(O.K) ページ16
着信音で目が覚めた。
何だか嫌な予感がする。
枕元で充電してあるスマホを手に取って画面を覗き込むと時刻は深夜1時。
電話の相手は大ちゃんだった。
大橋「…もしもし？」
自分で思っていたよりも掠れた声が出た。
西畑「あ、はっすん？ごめん、寝てたやんな？」
大橋「ん、ええよ」
西畑「ほんまにごめん…A潰れた。」
嫌な予感が見事に的中した。
大橋「今どこ？」
西畑「こないだはっすんと2人で飲んだ店」
大橋「行くわ」
電話を終えて大欠伸。
重い腰を上げて適当な服を着る。
飲み過ぎには注意しろと何度も口を酸っぱくして言っているはずなのに。
他の男の人と飲む時は事前に連絡がほしいって伝えてあるはずなのに。
Aはいつだって俺との約束を守らない。
乗り込んだタクシーから見える街並み。
東京での生活にもすっかり慣れてしまった。
俺はその"慣れ"が怖くて仕方がない。
慣れるということは油断してしまうということだから。
きっとAは俺との関係に慣れてしまっている。
俺から与えられる無償の愛を当たり前だと思っている。
そこに特別感を感じることはなく、"彼氏"という肩書きに胡座をかいている状況だ。
倦怠期？マンネリ？
何が当てはまるのかはよく分からない。
多くを語れるほど大層な恋愛もしてこなかった。
Aを好きな気持ちに変わりはないのに、A自身はどんどん変わっていってしまう―
西畑「あ！はっすん！」
指定された店に着くと、すぐに大ちゃんが入口から顔を覗かせた。
西畑「ごめんなあ、助かるわあ」
大橋「Aは？」
西畑「席で爆睡」
大橋「起こして連れてきてくれへん？」
暫くして大ちゃんが連れてきたAはお酒のせいか寝ぼけているせいか、いつもよりトロンとした表情を浮かべていた。
西畑「廉もおったから楽しくて飲み過ぎたんかもしれへん」
何のフォローにもならないその言葉に苛立ちを覚える。
大橋「A、帰るで」
A「んー…」
西畑「はっすんほんまにありがとう、気つけてな、」
大橋「おやすみ、大ちゃん」
なあ、A？
俺が迎えに来るんも肩貸すんも当たり前ちゃうで？
付き合ってることも好きでい続けることも、全部。
A「…はっすん」
大橋「ん？」
揺れる車内でAの顔を覗き込んだ。
A「…好き」
その一言で全てを許せてしまう自分の単純さに呆れ返ることしかできなかった。
大橋「…俺も」
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» 最後まで楽しんで頂き、こちらこそありがとうございました！今後も読んで頂けるように頑張ります！ (2022年8月17日 16時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 紅一点設定の短編集ずーっと楽しく読ませて頂きました！たくさんの素晴らしいお話をありがとうございました😍また新しい作品も楽しみにしています💕 (2022年8月17日 1時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - なつきさん» ありがとうございます！次の作品もお楽しみに…！ (2022年8月16日 9時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - 素敵なストーリーをありがとうございました。新しい作品を楽しみにしています！ (2022年8月16日 1時) (レス) @page50 id: 292579ac7e (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - とんとんまるさん» 素敵なコメントありがとうございます！とっても嬉しいです。今後のお話もお楽しみに…！ (2022年8月13日 6時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年7月13日 2時
