バニラアイスの夜(M.Y) ページ1
甘い声、滑らかな肌、桃色に火照った頬。
たっぷりと涙が溜まった瞳は俺を捉えて離さない。
正門「…また痩せた？」
A「…痩せてへん」
嘘や。
ブログでダイエット宣言してたやん、先月。
その長い髪に手櫛を通す。
俺と同じシャンプーが香って、胸が締め付けられるような苦しさを覚えた。
好きすぎて苦しい―
なんて言ったらAはどんな顔をするだろう。
甘くて苦くて、やっぱり甘い。
Aとの時間はいつだってそう。
その体付きも漏れる吐息も俺だけのもの。
誰にだって渡したくない。
シーツを掴む小さな手をそっと握った。
ぎゅっと握り返されて、そこから体温が伝わって。
同じグループに配属された時、嬉しくて仕方がなかった。
これから先もずっと傍でAを見ていられることに喜びを感じていた。
だけど今は少し違う。
大晴やこじけんと必要以上に仲良くする姿に醜い嫉妬が芽生えてきている。
正門「重たいんかな、」
行為が終わったベッドの上で思わず口にした独り言。
キョトンとしたAがこちらを振り向く。
A「別に太ったとか思わんけど」
正門「…体重の話ちゃうよ」
Aが小首を傾げる。
俺の嫉妬も苦しみも、本人は一切気付いていない。
鈍いというべきか楽観的というべきか。
だけどそののんびりした性格に俺は度々救われている。
A「…お腹空いた」
正門「アイスあるよ？」
A「…あかん、ダイエット中やもん」
ほら、やっぱり。
正門「たまにはええやんか」
A「あかん、その甘えが体型に出るんやから」
正門「…じゃあ1人で食べよ」
立ち上がろうとした俺の腕をAが掴む。
A「…1口頂戴」
正門「バニラかチョコ」
A「バニラ」
食い気味に答えたAがそっと起き上がった。
不意に唇を落とすと、照れたようにはにかんで。
ああ、やっぱり甘い。
だけど苦くて、それでも甘くて。
2人で食べるバニラアイスが汗の滲む体を程よく冷やす。
こんな時間がずっと続けば良いのに、なんて叶わぬ望みが生まれた。
明日になったらまたメンバーと笑い合うAを見て苦しくなる。
それを分かっているからこそ永遠を求めてしまう。
A「深夜のアイス、罪悪感えぐいわ」
正門「…カロリー消費する？」
そんな誘い文句で再び重なる体と俺の思いが混ざり合って溶ける、アイスのような夜に溺れた。
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» 最後まで楽しんで頂き、こちらこそありがとうございました！今後も読んで頂けるように頑張ります！ (2022年8月17日 16時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 紅一点設定の短編集ずーっと楽しく読ませて頂きました！たくさんの素晴らしいお話をありがとうございました😍また新しい作品も楽しみにしています💕 (2022年8月17日 1時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - なつきさん» ありがとうございます！次の作品もお楽しみに…！ (2022年8月16日 9時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - 素敵なストーリーをありがとうございました。新しい作品を楽しみにしています！ (2022年8月16日 1時) (レス) @page50 id: 292579ac7e (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - とんとんまるさん» 素敵なコメントありがとうございます！とっても嬉しいです。今後のお話もお楽しみに…！ (2022年8月13日 6時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年7月13日 2時
