プロローグ(M.Y) ページ22
演出家「薄っぺらいんですよね、」
その言葉に静まりかえる室内。
演出家「もう少し深みのある演技をしてもらわないと、2人が"偽物"に見えてしまうんですよ」
とても贅沢なことだと思う。
レギュラー番組で舞台をやらせてもらえるだなんて。
だけど時より自信を失いそうになってしまう。
演出家「2人仲悪いですか？」
正門「いや、そんなことは…」
A「ないです…けど」
思わずAと目を見合わせた。
稽古は他の仕事と並行して進んでいく。
だからと言って手を抜くことはできない。
演出家「普段から少し距離を縮めるよう努力してください。」
今回はAがメインの演目。
そしてその夫役に選ばれた俺。
膨大な量の台詞を暗記しなくてはならない。
求められるレベルに追いつかなくてはならない。
"できません"は通用しない。
A「正門くん」
正門「ん？」
稽古を終えて帰り支度をしている最中、Aが後ろから俺の名を呼んだ。
A「一緒に帰りませんか？」
正門「えっ…どうしたん？」
A「いや…さっき演出家さんに言われたんで」
正門「あー…そうやんな、」
Aと俺は良くも悪くも"程よい距離感"を保っている。
付き合いは長いものの、互いに互いの領域に触れないように慎重に接してきたのだ。
決して無理に気を遣っている訳ではなく、それが当たり前だった。
A「…たまにはちゃんと話しませんか？」
正門「そやな、」
2人きりで帰るなんて初めてかもしれない。
少しだけ緊張してしまうのは、やはり俺がAに心を許してない証拠か。
A「…怖いんですよね」
正門「えっ？…何が？」
A「正門くん」
正門「俺！？」
素っ頓狂な声を上げてしまった。
正門「…どこが怖いん？」
A「正門くんのことを知れば知るほど」
正門「…うん」
A「依存してしまいそうで」
ああ、同じや。
俺と全く同じ意見をAが抱いていたことに驚く。
深く関わってこなかった理由はそれが全て。
俺もずっと怖かった。
Aに近付き過ぎてしまえば、離れられなくなってしまいそうで。
A「…本能的に避けてました」
それはつまり、本能的に俺を求めているという意味でもある。
そして俺もまた、同じようにAを求めている。
正門「…これを機に」
A「…はい」
正門「…始めてみる？」
これが俺らのプロローグ。
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» 最後まで楽しんで頂き、こちらこそありがとうございました！今後も読んで頂けるように頑張ります！ (2022年8月17日 16時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 紅一点設定の短編集ずーっと楽しく読ませて頂きました！たくさんの素晴らしいお話をありがとうございました😍また新しい作品も楽しみにしています💕 (2022年8月17日 1時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - なつきさん» ありがとうございます！次の作品もお楽しみに…！ (2022年8月16日 9時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - 素敵なストーリーをありがとうございました。新しい作品を楽しみにしています！ (2022年8月16日 1時) (レス) @page50 id: 292579ac7e (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - とんとんまるさん» 素敵なコメントありがとうございます！とっても嬉しいです。今後のお話もお楽しみに…！ (2022年8月13日 6時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年7月13日 2時
