かもしれない(N.D) ページ2
好きかもしれない―
そう思った時にはもう遅い、と誰かが言っていたのを思い出す。
西畑「今何してるん？」
A「今ですか？…特に何も」
電話越しの声が擽ったい。
直接聞くのとは違うそれは耳を伝わって心を揺さぶる。
西畑「今日オフやんな？」
A「はい」
ずっと見て見ぬふりをしてきた。
それは果たしてグループの為か、自分の為か。
西畑「…どっか行く？」
その一言を絞り出すのにかなりの勇気を要した。
A「どこ行きます？」
一気に心拍数が上がるのが分かった。
グループ結成以来毎日のように仕事で顔を合わせているというのに、プライベートで会えるとなるとこんなにも嬉しい。
それはメンバーに向ける感情ではなく、1人の女性に向ける気持ち。
西畑「どこでもええよ、」
Aと過ごせるのなら場所や時間なんて問わない。
いつどこで会ったって、それはきっと幸せに値する。
西畑「どっかAの行きたいとこ行こ」
俺は生粋のインドア派。
一方でAはアクティブな性格。
決して無理をして合わせようとしているのではない。
Aは俺にとって"尽くしたい"と思わせる存在なのだ。
A「んー、」
悩むように唸る声。
俺は数回瞬きをしてスマホを握る手に力を込める。
A「大吾くん今どこのホテルでしたっけ？」
西畑「俺？先週までAがおったとこやで」
メンバーと言えど常に同じホテルに滞在している訳ではない。
A「裏にラーメン屋ありません？」
西畑「あー、あったかも」
A「そこ行きたいです」
頭の中で思い描いていた場所よりずっと庶民的な回答に戸惑う。
折角丸1日オフなのにラーメン屋だけで済ませてしまって良いのだろうか。
西畑「他にないん？」
A「んー、」
また悩む声。
A「大吾くんとやったらどこでもええかなって」
大きく脈打つ心臓。
その言葉だけで暫くは浮かれ続けるであろう自分の単純さに呆れ果てる。
A「どうせ明日も現場で会うし」
一気に冷めていくのが分かった。
西畑「…そやな、」
とんだ勘違いだった。
Aにとって俺は何の特別要素もない、ただのメンバーの1人。
A「15分後に出ますね」
"かもしれない"なんて言葉では誤魔化せないくらい大きくなっている気持ちに蓋をするのは極めて困難だ。
だけど俺は今日も"メンバー"としての顔をAに向ける。
それが何の為なのかは分からぬまま。
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» ありがとうございます！とても嬉しいです…これからも楽しんで読んで頂けると幸いです！ (2022年7月13日 1時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 一話完結型の短編集でこんなにもどのお話も楽しく面白いなと感じたのは初めてでした❤︎お忙しい中、たくさん更新してくださり毎回更新されるのが楽しみでした(^^)また続編も今から楽しみにしています❤︎ (2022年7月12日 23時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - kkさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて幸いです。そしてリクエストもありがとうございます！更新まで暫くお待ちください！ (2022年6月24日 12時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 小島くん、大晴くんがメインのストーリーリクエストさせて頂きたいです❤︎お忙しいとは存じますが、更新楽しみにしています(//∇//) (2022年6月24日 0時) (レス) id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - コメント失礼します。紅一点設定大好きで、わさび醤油さんが書かれるお話や設定、展開がとても素晴らしくて楽しく一気に読ませて頂きました❤︎どのお話も好きなのですが、特に小島くん、大晴くんのお話にきゅんとしました❤︎ (2022年6月24日 0時) (レス) @page16 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年6月15日 0時
