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不死鳥人形 ページ1

不死身の人間に、不死鳥人形とはよく言ったものだ。
不死鳥(ほうらい)、というのは、中国にある伝説の山、蓬莱山が元となったもの。その山には、不老不死になる薬があるらしい。

人間は、イレギュラーなものを差別する傾向にある。それ故に、死ねない私は、人の形をした不死の化け物として、不死鳥人形と呼ばれるらしい。
ただ死ねなくなっただけで、周りの人間とは同族のはずなのだが。まあ、酷い仕打ちがあるわけでもなく、ただ少し恐れられているだけなので、そこまで気に留めてはいないが。

ところで、死なないとは言っても、痛いものは痛いし、温度だって普通に感じる。現に今、軽くヘマをして崖から落ちて、足に木の枝が刺さってうずくまっている。普通に痛い。誰か助けてくれないだろうかと思ってはみるが、それはもう静かで人気のない場所だ。人が来たらもはや奇跡の領域である。…と、いうか。死ねないって、もはや拷問ではなかろうか。もしも今毒のある物を口に含めば、解毒剤を飲むか自然と毒が抜けるまで、延々と苦しむことになる。
どうせなら、痛みも苦しみも感じない体が良かった。

…段々寒くなってきたな。さて、どうするか…。かなり長く生きてきたので、ある程度、知識は積んでいる。
確か、今目の前に生えている草はスイセンだから、葉に毒があったはずだ。…近くにリンゴの木がある。池もあるし、その中にはヤマメとアユ。多分、私じゃなくても知識さえあれば生きていける。ざっと見積もって、1週間はもつはずだ。とりあえず、足の怪我をどうにかしなければ。近くに薬草があれば万事解決だが、そこまでうまくは行かないようだ。面倒だなぁ、どうするか。
飢え程度で死ねるのならば、ここまで苦労はしない。というか、もうとっくに死んでる。

深くため息をついて、再び周りを見てみた。よくよく見れば、私が落ちてきた崖に、太く長い蔦が絡みついていた。…登れるか?ちょっと行ってみよう。
何度落ちたって死なない。大丈夫だ。痛いけど。
ぐ、と蔦に手をかける。うん、滑らない。まさに、不幸中の幸いと言ったところか。体重の重心を、蔦にかけた腕に移動させながら、足を上げて蔦に乗せた。
何度か、グイグイと力を入れてみる。切れない。…これまた、随分と丈夫な蔦だ。てっきり、すぐに切れるものだと思っていた。
ふと、手元に、一生懸命蔦を登ろうとしているクモを見つけて頬が緩んだ。私も、頑張るか。

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作者名:ユンユン | 作成日時:2023年5月7日 11時

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