虜(1) ページ34
「え〜っ美術館?!」
「うん、たまにはいいじゃん。行こうよ」
シゲに誘われた真夏のデート。
海が良かったなと渋々赴いた美術館の、
シゲが好きだと言う画家の回顧展。
絵なんて難しくてわかんない。
自分ちに飾る絵なんて自分で描けばいいじゃん。
常々そう言っていた俺は、そんなもんじゃないのだと思い知ることになる。
ーーーーーーーーーー
「どうだった?」
じっくり絵を観てまわり、外に出ると日が暮れかけていた。
室内との温度差に汗がぶわっと溢れ出す。
「うん・・」
初めての想いに言葉が出てこなくて俯く俺と、
「手越?」
半ば強引に俺を連れて来たくせに
心ん中は不安でいっぱいな様子のシゲ。
「よかったよ。連れて来てくれてありがと、シゲ」
素直な感想を告げる。
これは本心。
そして、シゲとの別れの言葉でもあった。
ーーーーーーーーーー
「あれ?手越は?」
今日はこれで仕事が終わりだから一緒に帰ろうと思っていたのに、
シャワーを浴びて戻るとそこにもうあいつの姿はない。
「帰ったけど。約束してたの?」
アイスを咥えながらぼーっとしていた増田さん。
「いや、してないけど・・」
こんな日はいつも一緒に帰るのが常だったのに。
最近変だ、あいつ。
「もしもし手越?今どこ?」
胸騒ぎを感じて電話を手にする。
すぐに出た恋人の声に違和感を感じる。
「今、ちょっと外」
「外ってどこ?会えない?」
心臓がチリチリと焦げていくような、
得体の知れないものが忍び寄ってくるような。
「ごめんシゲ、ちょっと無理なんだ」
「なんで?会いたいんだよ。手越、お願い」
涙声になっている自分に気付くけれど
大丈夫って思わせて欲しくて、
言ったことのない我が儘を口にしていた。
「・・ごめんね」
一瞬息を飲んだように感じたのは気のせい?
「っなんでだよ!」
一方的に切られた携帯を投げつけると、まっすーが驚いて目を丸くする。
いつだって、俺が一番だと信じてた。
だっていつもあいつは、
愛の言葉をくれたから。
俺の欲しい言葉を
俺に一番に、くれたから。
「どうしたの」
床に崩れ落ちた俺の背中に、大きな手が触れる。
「まっすー・・変なの、あいつ・・」
大きな胸に包まれて、俺の涙腺は崩壊する。
見えない未来に泣くのはやめたはずなのに。
ぽんぽんと優しく摩られる度に、
涙が次々に溢れて来た。
(つづく)
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大福もちこ(プロフ) - クラハさん» ね〜晴れるのに。笑 NEWS色の花火上がってテンション上がりました^ ^大阪行きたかった〜!クラハさんに会いたかった〜!東京に住んでる友達に合わせて泣く泣く…(p_-)シアタードラマシティ、良いですよね〜☆梅田行きたい… (2014年7月25日 23時) (レス) id: 0618d2993c (このIDを非表示/違反報告)
クラハ(プロフ) - 大福もちこさん» まっす~が来たら晴れるのに(笑)舞台、東京ですよね?大阪なら会えるのに←会場が会社近く (2014年7月25日 19時) (レス) id: 3632dde973 (このIDを非表示/違反報告)
大福もちこ(プロフ) - クラハさん» 三つもお買い上げ!笑 そうしましょ〜。舞台申し込んでみました( ̄▽ ̄)どうなる飛行機代…。北海道、ロシアかどこかの山火事のせいでモヤがかかってます。花火大会来たのに空気が悪いよー。NEWSが来れば晴れるのに… (2014年7月25日 18時) (レス) id: 0618d2993c (このIDを非表示/違反報告)
クラハ(プロフ) - 大福もちこさん» サラ肌は黒と水色ですよ←ブラが一気にダメになったらしい(笑)小説はゆっくり行きましょ。舞台、行きたいですよね~(//∇//) (2014年7月25日 15時) (レス) id: 3632dde973 (このIDを非表示/違反報告)
大福もちこ(プロフ) - クラハさん» ひゃほ〜!もう買ったんですか^^いいなー私も欲しい♪ま、じゃあ私は・・シゲ担だけどクリームにしよか><Kラジでのブラトーク面白かったですねー。50超えどうもです☆最近停滞気味><舞台観に行きたい・・。 (2014年7月25日 11時) (レス) id: 2b183af5c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:大福もちこ | 作成日時:2014年5月16日 21時