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｢まず、お前が幽霊やってことは信じた。やけど、何でここに居るんかも分からん。取りあえず…出て行ってくれお願いや｣
｢それは出来ないです！志麻さまの専属幽霊ですので！｣
｢何やねん専属幽霊て！メイドちゃうんやからそんな言い方やめろや！｣
｢えぇ？専属幽霊ですから、お家のこととか一通り致しますよ！志麻さまが出かけている間にお家の掃除や、料理、洗濯だってできます！｣
目の前の幽霊の言い分が嘘には思えなかった。
と言うか、これが嘘でも本当でもどちらでもいい。
幽霊だと言われた時点で非現実的なのだし、この幽霊が出て行かないとなるとこれぐらいして貰った方がいいだろう。
｢じゃあ…家のことやっといてくれるんやな？｣
｢はい！勿論です！人畜無害な幽霊ですので安心してくださいね！｣
｢…まぁお前を信じたるわ。名前は？｣
｢そうですねぇ……名前はナイショです！｣
はぁ？と問うてみたものの、彼女の笑顔が少し可愛い、と思えてしまったのでそれ以上は何も言わなかった。
それが、彼女との新しい生活───いわゆる｢新生活｣の始まりだった。
＊
彼女───と言うのには些か抵抗があるが、他に幽霊と呼ぶにはあまりに冷たすぎるので彼女と呼ぶのがまぁ妥当だろう。
彼女は宣言通りに、家の一通りの家事をしてくれていた。
だが、彼女は唯一｢風呂掃除｣だけは嫌がった。
ハッキリと｢いやだ！｣と言ったわけではなかったが、前に一度聞いた。
｢あのさ、ちょっと聞きたいんやけど｣
｢どうしましたか！志麻さま！｣
｢家のことしてくれてるの有難いし、助かってるからあんまり言いたないけど…風呂だけ掃除してへんのって何で？｣
｢ああ……えっとですね……ええっと……｣
珍しく渋りながら目を逸らして返答に困っていたので、それから先は聞くのを辞めた。
トイレ掃除だって、食器洗いだってしてくれるのにどうしても風呂掃除だけは嫌がっていたので、水が嫌いだと言うことはなさそうに思えた。
風呂掃除だなんて俺にでも簡単に出来ることで、それ一つが出来ないぐらいで彼女を怒ったりする程俺も彼女のことが嫌いではなかった。
そして時は戻って現在。
｢てか思ったんやけど、お前って何で死んだん？そして何でここに居るん？｣
｢それは秘密です！教えられる時が来たら教えますよ！｣
｢えぇ俺お前のこと何一つ知らへんやんけ〜｣
そして思ったことが一つ。
俺は彼女に言った通り、彼女の事を何一つ知らない。
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作者名：作者一同 x他4人 | 作成日時：2020年4月5日 19時
