START【歌い手】 (ページ1)

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うらたぬき＊Ready?＊Elice ページ1

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「なぁ、お前が独り暮らしするとしてさ。これだけは譲れない条件って何？」

「えー、何突然。」

「いや、今引っ越そうと思ってさ…他の人も意見も聞こうかなって。」

「んー…そうだねぇ…」

　
晴れた日の昼下がり…にもかかわらず、同業者で彼氏であるわたる…もとい、うらたぬきが
スマホとにらめっこしながら突然そう聞いてきた。
後ろからスマホを覗いてみると、賃貸サイトを見ているのか色々な物件の情報が。

　
「希望はいろいろあるけど…これだけはってなるとやっぱりセキュリティかなぁ。」

「あー、そこか。ちなみに希望ってなると？」

「都内に出やすい、キッチンが広い、バストイレ別、ある程度防音…」

「あ、キッチン以外は俺とほとんど一緒か。」

「わたるはほとんど料理しないもんねー」

　
何て言えば、拗ねたようにうっせ…と言ってくる彼氏さん。
それにしても、引越しかぁ…私もそろそろまた引っ越そうかなぁ…
今住んでる家ももう2年くらい住んでるし、そろそろ更新だもんなぁ…

　
「あ、結構いいのありそう…Aさ、来週の水曜日って暇？」

「来週？うん、空いてるよ。」

「内覧行くから付き合ってよ。」

「え、私行ってもいいの？」

「いいよ、むしろ来て。」

　
約束、なんてそんな無邪気な笑顔で言うのは卑怯だよ。
絶対に断れないじゃん……それにしても内覧とか久しぶりだなぁ。
渉の見たところで、私がよくて渉が選ばなかったら私が借りてもいいかな。

　
「…こいつ、絶対意味わかってねぇよな。」

「え？なんか言った？」

「何でもねぇよ…」

　
そうなれば、と私もスマホで賃貸サイトを見ていれば
呆れたような声が聞こえた気がしたが…中身までは聞こえなかった。
声の先に視線を向ければ、呆れた視線を返してくる渉。
…え？私何かした？？？

　
「渉？」

「…ばか。」

「え？？」

「もういいし、Aのばかー」

「のわっ！？」

　
拗ねたように、バカと繰り返す彼に近づけば
そのまま抱きしめられる。……いや、私が何をしたというのだ？
この状態は嫌いじゃないからいいけど……

　
「A…」

「どうしたの今日。」

「なんでもねぇ……」

「なにそれ、まぁいいけどさー…」

　
たまにはこんな日も悪くはないけどさぁ…
しばらく抱きしめられたままの私は、その心地よさに寝てしまったが。

　
「…いつ言おうかな…一緒に住もう、って。」

　
もちろん、渉がこう思ってたのなんて知らないし。