壱章｢ガイドと路地裏｣ ページ4
｢本日はこのツアーに参加頂きありがとうございます！ ツアーを案内させていただきます、花菱と申します｣
パラパラと拍手が鳴った。周りには十人余りの人が、大きな荷物を抱えている。中には子連れもいて、子供にこんなツアーに参加させていいのかと疑問に思った。
それにしてもツアーガイドさんは美人だな。長いまつげ、細い眉、黒く長い髪はとても艷やかで、すれ違っただけで頭に焼き付いてしまうくらいには美しい。どこかで見たような気もするが、あんまり覚えていないしきっと人違いだろう。
声も鳥のさえずりみたいだ、高いけど聞きやすくて可愛らしい。ベタ惚れだな、と思いながらガイドさん___花菱さんの説明を聞いた。
花菱さんが案内したバスに乗り込んでまもなく、バスは動き始めた。電車とは違う心地よい揺れに少し眠気を誘われる。ただし、自分はバス酔いしやすいからあまりウハウハしてられない。カバンからいつも飲む酔い止めを取り出して、口に入れた。
駅前から遠くまできて、周りに緑が増えていく。初日は何処に行くんだ、とパンフレットを開くと、どうやら田舎の方に行くということが判明した。
周りは思いのほかガヤガヤとしている。相席になった人たちもお互い自己紹介でもしたのだろうか、笑顔で楽しそうに話している。僕は相席では無いから、横にあるのは自分の荷物だけだ。荷物相手に喋りかけるなんて死んでもやりたくない。
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バスに揺られること三十分、着いた駅でバスから降りて歩いて移動するようだ。少し遠いらしく軽装で来てください、とのことで僕は財布と携帯をポケットに入れてバスから降りた。リュックもあるのだが明らかに必要無いものもあるから置いてきた。
年増な人もいるけれど大丈夫だろうか？ と思っていたがいらない心配だったらしい。登山にでも使うようなガチな靴を履いてきている。杖なんか持っていない。
「今日見に行くのは四十年前に起きた事件の現場です」
«春雨町路地裏暴行事件»
四十年前に起きた事件の一つ。当時十七歳だった女の子が当時二十歳の男に殴られた事件だ。加害者の男は二十歳になったお祝いに沢山酒を呑んでいて、事件を起こしたことを覚えていなかったらしい。
事件の年にはまだ産まれていなかった僕だけれど、未だに何度も聞くくらいには酷い事件だと聞いている。十年毎にドキュメンタリー番組で取り上げられているらしい。
続く
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乳児(プロフ) - 唯苳さん» ありがとうございます！続き楽しみにしててください笑 頑張ります！ (2018年4月2日 23時) (
レス) id: fde8f5ea90 (このIDを非表示/違反報告)
唯苳 - 冒頭からおもしろくて、とっても引き込まれました！続き楽しみにしてますo((*^▽^*))o (2018年4月2日 21時) (レス) id: 8a6dabb221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：乳児 x他1人 | 作成日時：2018年4月1日 21時
