夏色の君は知っている

鈍感 ページ15

「え、花？」




わけがわからないという顔で首を傾ける彩。


そんな動作一つでも無意識にかわいいって思ってしまう俺はマジで重症なのかもしれない。





うーんと考え込む彩をドキドキしながら見守る。


けど数秒後、彩はだめだ、というふうに肩を落とすとこっちに振り返ってこう口にした。





「どういうこと？」



答えは自分で考えてと言おうとしてふと、口をつぐんだ。




そして思い出した。

こいつはあんなに好きオーラを出してる美門の行為にも気づかねーほど鈍感だってことを。



思わずため息。


こんな分かりづらい告白、鈍感なこいつにはわかるはずがない。




衝動的だったにしろ、結構勇気出したんだけどな。




もう一回言うしかないのか...？




彩のほうをちらっとみてその大きな瞳と目が合う。




そうだ。

俺は彩が好き。

ただそれを言うだけのこと。



そして俺はもう一度心を決めた。


大きく息を吸い、心臓を落ち着かせ再び口を開く。



「だから俺...」


「あ、待って！！」





そう俺が口にするのと彩があわてたように俺の口をふさいだのが同時だった。




っ...！

ほんの数十センチ先に彩の顔が鮮明に見え、心臓が飛び跳ねる。


いつもわからない香り、肌の白さ、腕の細さ。




いままではるか遠くにいた彩が初めて俺と同じ空間に降り立った気がした。




「あ、ご、ごめん！！」



ぱっと手を離し、うつむく彩。




「そ、そんな気にしてないから。大丈夫。」


「ほんと？」


「ここでウソついてもしょうがないだろ？」



そういうと彩はそっかというようにこくんとうなずくとふわっとほほ笑んで、


「ならよかった！」

と言った。



...ほんとに少しのことで謝るんだな。

まだやっぱ俺とはそれほど親しくないからなのか？



胃がずんと重くなる。



いや、でもこれからだ。

これから仲良くなればいいんだから。



そうむりやり考えると彩に向き直りこう聞いた。



「で？なにがわかったんだ？」


「あ、そうそう！さっきの答え！」



思いもよらない答えに今日数十回目となる心拍数の増加が始まった。



「へ、へえ。すげーじゃん」


動揺を隠せずそう口にすると彩は手をぶんぶんふり


「間違ってる...気するけど」


と弱弱しく言った。





どうか間違えてますようにという心の声とは裏腹にこう自分から声が出る。


「なんだと思う？」




そして彩から出た答えはこうだった。



「香水でしょ？」

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上杉奏

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