限定糖度 ページ6
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―――俺は今、苛々している
「遅ェ」
そう、同居人の帰りが遅ェ
同居人、とは云うまでもなくAの事だ、もう五年一緒に暮らしているが、帰りが遅くなる日は必ず携帯に連絡を入れるよう云ってある
にも関わらず、連絡無しときた
(ぶッ殺されてェのか彼奴は・・・――)
過保護、と云われれば其れ迄だが、俺としては別に何て云われようが構わない、彼奴さえ無事に帰って来ンならな
――勿論、此の行き過ぎた心配が単なる世話焼きからで無い事は数年前に気付いている
そしてその感情は・・・――
『ただいまー』
知らねェ男もんの外套を羽織って帰ってきた其奴に苛立つ程には、膨れ上がっている。――どこの男に唾つけられやがった此奴
「おかえり、って、びっしょ濡れじゃねェか手前」
『海に落とされた』
「襲撃か!?」
『まあ、否定はしない』
「何だ其れ」
風呂に行こうとする其奴の手を無意識に掴んだ
(――あれ、何で引き留めた・・・?)
『なに?』
「あー、っと、其れ、其の外套誰のだよ」
『ああ、太宰』
(・・・・・・・・・・・は?――太宰、だと?)
” そろそろ彼が動きだす ”
―――嗚呼、成る程
「宣戦布告かよ」
『ん?あ、中也の鯖、猫にあげちゃったよ』
「何の話だよ」
Aは偶に、俺を下の名で呼ぶ
無意識か否か、おそらく無意識だが、太宰が呼ぶから其れが移ったのは確かだ、――気に食わねェ
ついでにもう二つ程腹立つ事柄を挙げるとすれば
「手前、透けてる、下着」
『え、嘘、本当だ』
「さっさと風呂入れ莫迦」
之を太宰も見たって事と、今俺が死に物狂いで平静を装っている事をあの木偶は確実に見越して腹で笑ってるだろうからだ
俺への宣戦布告と嫌がらせを一度にやってのける彼奴は矢ッ張りムカツク、五発殴って七蹴り入れてェ
『中也ー!』
と、一人悶々苛々してたら脱衣所から叫ばれた
頼むからさっさと風呂入れ、目のやり場に困る
『中也ってば!』
「何だよ五月蝿ェな」
『ビール冷やしといて!置きっぱなし!』
「・・・・・はいはい」
――・・・まァ、此奴に免じて今回は善いか
よく判らねェ妥協をして此の後の晩酌に思いを馳せる俺は、相当甘ェと思う。――でも善い、Aが此処に居ンなら、今は其れで善い
「って、鯖一個しかねェ」
猫にやったってそういう事かよ
莫迦な彼奴に頬が緩む俺は
「ピザでも頼むか」
―――つくづく甘ェ
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ハウスダスト(プロフ) - 中也さん…。いいやつだなぁ…。 (2017年12月4日 21時) (レス) id: aedc87e387 (このIDを非表示/違反報告)
十音 - 中也アアアアアア哀しい。 (2017年8月25日 23時) (レス) id: e1078df416 (このIDを非表示/違反報告)
十音 - お疲れ様でした!とっても面白かったです! (2017年8月25日 23時) (レス) id: e1078df416 (このIDを非表示/違反報告)
十音 - うわーん(涙) (2017年8月25日 23時) (レス) id: e1078df416 (このIDを非表示/違反報告)
十音 - なんと!宣戦布告っていう言葉がそのまま出てきた! (2017年8月25日 22時) (レス) id: e1078df416 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:七森 | 作成日時:2017年8月15日 17時