彼の言葉 ページ39
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―――成る程、そういう事か
以前乱歩さんに云われた ” 君は今回の被害者だね ” って言葉の意味を、今になって理解した、――解せないが、其の通りだった
降下するエレベーターからヨコハマの港町を見下ろし、安堵、と云っていいのか判らない溜め息が零れた
______数分前
「一つ、確約をしてくれるかな?」
『確約、ですか』
「君の異能は恐ろしく強力だ、其の気になれば
ポートマフィアを滅ぼすことも可能だろうね
其処で、君と個人的に和平協定を結びたい
今後、うちが探偵社とぶつかる事があっても
君は一切の関与をしない事、――どうかね?」
『えっと・・・・』
「君は組織の一隅でありながら私の指示に逆らった
この確約を断る選択肢は必然的にないはずだが?」
『わ、かりました、約束します』
「ふふ」
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――――・・・・そういう事だ
要するに始めから仕組まれていたのだ
太宰が私を探偵社に引き込む算段を練っている事に気付いたボスは、何故か早々に私の保身を諦め、組織を抜ける際の強制的和平を優先した
” 之が今回の論理最適解だよ ”
――ボスの言葉だ、確かに筋は通る。私の異能がポートマフィアを滅ぼす程のものだというのも、まあ判らないでもない
けど、其れは満月の時だけだ。のみならず、其の異能を飼い慣らせてもいない私に、本当にそんな事が出来ると、何故思ったのだろうか、協定まで結ぶ根拠は一体・・・・・
と、考えているうちに或る執務室の前
ノックも無しに其の扉を開けた
『やぁ中原、調子はどうだね!』
「最悪だ」
そう、怪我をして書類整理に勤しんでいる中原の部屋だ、――松葉杖が立て掛けられている辺り、怪我は足で自由に歩けないと見た
「なンだよ、おちょくりに来たのか手前は」
『まっさか、礼を云いに来たんだよ』
「・・・・・・なンの事だよ」
『ロマネ』
「・・・・」
『就職祝い』
「違ッ!」
『って、ボスが云ってた、中原君からだよって』
「ハァ、あの人は・・・」
――先刻執務室でボスと飲んだ葡萄酒、あれは中原がボスに渡したらしい
「手前が組織抜けて清々するからだよ」
と、彼は云っているが、私はボスに聞いた、――「君を手放す事、以前彼に云ったら凄く反対されたんだけどねぇ、でも最終的に、彼はこう云ったのだよ、____ 」
―――思い出すと自然と頬が緩む
” きっと之が、彼奴の幸せですから ”
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ハウスダスト(プロフ) - 中也さん…。いいやつだなぁ…。 (2017年12月4日 21時) (レス) id: aedc87e387 (このIDを非表示/違反報告)
十音 - 中也アアアアアア哀しい。 (2017年8月25日 23時) (レス) id: e1078df416 (このIDを非表示/違反報告)
十音 - お疲れ様でした!とっても面白かったです! (2017年8月25日 23時) (レス) id: e1078df416 (このIDを非表示/違反報告)
十音 - うわーん(涙) (2017年8月25日 23時) (レス) id: e1078df416 (このIDを非表示/違反報告)
十音 - なんと!宣戦布告っていう言葉がそのまま出てきた! (2017年8月25日 22時) (レス) id: e1078df416 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:七森 | 作成日時:2017年8月15日 17時