【文スト】太宰に狙われてます

無自覚苦労人 ページ28

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『只今戻りましたー』



――乱歩さんの名探偵の仕事は、まぁーあ一瞬で終わった、本当、文字通り一瞬だった、恐るべし超推理

そして帰り、駄菓子屋に寄り道して公園のベンチでアイスを食べて路地裏で猫と戯れて諸々･･･最早仕事より時間を使って社まで帰ってきた


おかげで、



「Aアイス買いに行こう」

『又ですか？お腹壊しますよ』

「じゃあ餡蜜食べに行こう！」



と、まあすっかり仲良くなった

――って云うより、すっかり懐かれた、こっちの方がしっくり来る表現ではなかろうか


此の国きっての名探偵、江戸川乱歩の外出には誰も何も云わないのか、こうして堂々とサボりに行こうとしているのに社員は皆、微笑ましそうに「行ってらっしゃい」と。――否、一人を除いて



「――何？太宰」



私の腕を引き、事務所を出ようとする乱歩さんの前に立ちはだかった其の男、――太宰治の表情は、ニコニコ、だが目が笑っていない



「私も連れて行ってくださいよ、乱歩さん」

「別にいいけど、奢らないよ」

「勿論、判ってますよ、――後、其れ」



と、乱歩さんの手から私の腕を引き剥がした

其の儘手の甲を一度撫でられ、ビクリと肩が跳ねた私を横目で見て微笑すると「行きましょうか」と、まるで何も無かったように歩き出した太宰


(な、何だ････？)


何となく雰囲気が黒い･･･ハテ？


と思っているのは私だけのようで、乱歩さんは「――君も苦労するね」と、何とも解せない哀れみの言葉を投げて太宰の後に続いた


私、絶対探偵向いてない

此処迄の流れが全く掴めない



よく判らない儘、二人の後に続くのであった




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