きっと、君と何度でも。【紫】

＊一話＊ ページ2

時刻は午前九時


いつもならとっくに起きている君が、未だに起きてこなかった。




当たり前といえば当たり前かもしれない、あんなこと(・・・・・)があったんだから。



メンバーからのメッセージが入っているのは気付いていたが、返信する気にはなれなかった。








やることがなくてTwitterを開くと、見事にトレンド入りしている言葉




“ななもり。 彼女”






昨日の放送で、誤ってAが声を出してしまったことが原因だ。



俺とメンバーの弁解もあって、“親戚の女の子”ということにはなったが


リスナーさん達の疑いは解けなかった。






そのことをAは凄く気にしていたから、きっとそれで眠れなかったんだろう。




そう勝手に解釈して、しばらく起きてくるのを待つことにした。




＊＊＊＊＊




一時間程経ち、階段を下りてくる足音が聞こえてきた。



しかしその様子がおかしい。





忍び足というか、ばれないように恐る恐る下りてきている…そんな感じ。



さすがに違和感を感じ、廊下に出てみた。









『……!!』




廊下にいたのはやっぱりAだった。


でも、いつもとは様子が違う。





いつも通りの無邪気な笑顔はなくて


怯えたような、驚いたような表情








「……おはよ、遅かったね。昨日のこと、俺は気にしてないからさ」




出来るだけ優しい笑顔で言ったが、Aはみるみる目を丸くする。


そして＿＿ゆっくり口を開いた。






、






、






、






『Aって、誰ですか？それに……貴方は誰ですか？』

「え……っ」





その瞬間、俺の中で時間が止まったような気がした。

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