ケンタイキ ページ10
『今ごめん、って…』
Aがまたも困惑して俺の目を見る潤んだ瞳は涙を零さずじっと俺の目を見つめていた。数年間罵倒を繰り返されて一度も謝られなかった、のに。今謝られたから。
「うん、今まで本当にごめん、許されないことしたの分かってる。傷付けたよな、身体は傷付けてないけど心凄い傷付いたよな」
自分のした事を振り返るとぶわっと涙が出てきて泣き顔をAに見られないように両手で顔を隠した時に手をAに握られた。
『顔、見せて?』
手で顔を隠しながら首を横に振ったがAは手を離さなかった。仕方なく手を顔から離すとAに笑われた。笑われたのは悔しかったけど涙が止まらなくて
「なんで笑うの、っ、」
『だって、渉凄い顔だよ?笑わずに済まないよ』
「おれ、謝ってるのに、」
Aは両手で俺の顔を包んで微笑んだ。
"渉が辛かったの知ってるよ大丈夫だよ"
"怒ってないからね、"とまるで幼児をあやす様に。
『本当はね辛かったんだ。渉に嫌われたんじゃないかってずっと思ってた。武道館の時も凄い辛かったんだ。もうダメなのかなって思って、最近は配信も沢山しててリスナーさん想いなのは分かるのでも、でも、渉の1番初めのリスナーは私なんだよ、渉と初めてカラオケ行った時、渉の好きなあの曲を歌ってくれた時、わたし、』
必死に話すAを優しく抱きしめて目を合わせたあとAがこういった。
『わたし、渉の歌に惚れたの、大好きなんだよ、渉が世界で一番大好きなの、』
『だから、もっと歌聞かせて?』
全てを許したAが俺に優しく微笑んで頬にキスをした。悪戯に笑いごめんね、と一言残して。
____________
「はーい、こんばんはうらたでーす」
静かな個室で今日も配信が始まる
真っ暗な部屋で一人数千人のリスナーの前で。
「じゃあ今日は大事な話って事で、
俺とこたぬきの皆に関わる話をしようかな」
画面上には
"なになに?" "もしかして引退?"と表示される
困惑する俺のリスナー達。
「歌について、と皆が思う大切な人について。
大事な人が皆出来ると思う、その時にどう接するか、どうその人と生きていくかって言う話ね」
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Ria - 次の作品あれば楽しみにしています(*‘ω‘ *)この後の素直になってデレデレになるのを見てみたい…(笑) (2018年12月11日 1時) (レス) id: 72693a3d45 (このIDを非表示/違反報告)
ライチ☆(プロフ) - 読みながら涙を流しました。処女作とは思えないほど良い作品でした。次の作品を書かれるのでしたら楽しみにしてます。 (2018年12月10日 16時) (レス) id: bb5c35b9e5 (このIDを非表示/違反報告)
しゅがー - むっちゃいいです。凄い続き気になるのですが!!更新頑張ってください!! (2018年12月3日 18時) (レス) id: 1f604a1e22 (このIDを非表示/違反報告)
なまこ - 最高に面白い展開でドキドキします!更新楽しみにしています! (2018年12月2日 14時) (レス) id: 2a0d835366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一ノ瀬 旅人 | 作成日時:2018年11月19日 22時